『どうか佳いお年を…』
今年最後の『週刊きらら』です。
何を書こうかな?
あれこれ迷いますが、やはりハッピーなお話で1年を締め括りたいと思います。
Aさん、こんにちは。
親子3人、恙なくお過ごしですか。
あなたが『きらら館』に初めてお見えになったのは年明け早々でした。
涙を一杯浮かべて、お化粧はグチャグチャ。
目の周りは真っ黒で、まるでパンダのようでした。
何を聞いても泣きじゃくるばかり。
珈琲を淹れても、お茶を出しても口もつけぬままで30分。
ようやくポツリポツリ…。
「今日はわたしの誕生日なので、ふたりでお食事をして…」
「お店を出た途端に『別れて欲しい』と言われたんです」
彼の思いもよらぬ言葉に呆然自失。
眩暈で思わずしゃがみこんだところで目に入ったのが、『きらら館』の看板。
無我夢中でエレベーターに飛び乗ったとのこと。
ふたりは結婚を約束、近々にも式を挙げる予定で、しかもお腹には彼の子どもを宿しているとか。
何事にもタイミングがあります。
理由はどうあれ、こんな可愛い女性を選りにも選って誕生日に別れを切り出して泣かせるなんて無神経にも程があります。
ともあれ、ふたりの生年月日をお伺いして鑑定。
どうせロクでもない👨に違いないと思いきや。――ムムッ!――少し気弱ですが、なかなかのナイスガイ。――しっかり者のAさんにはピッタンコです。
「結婚度数」は100点満点の96点。これ以上ないと言っても過言ではないベストな組み合わせではないですか!
「彼をここへ呼べる? これから予約のお客さまが1件入っているから、その後でわたしがお話しします」
「えっ。は、はい」
乗りかかった船です。
“お節介オバサン”と言われるのを承知のうえで直接、彼と会うことにしました。
1時間後、彼女に手を引かれた彼が、おずおずと入ってきました。
鑑定通りの好青年です。
なぜ、ここへ呼ばれたのか。落ち着かない様子です。
ひとわたり彼女がここまでの経緯を説明。
彼が状況を把握したところで、単刀直入に「別れの理由」を聞きました。
「僕は彼女のことが大好きです。結婚するのは今でも彼女しかいないと思っています。でも、お見合いを勧める両親が反対するので…」
「ご両親の反対? 冗談ではありません。結婚するのは、あなたたち『ふたり』なんです。こんなにも相性が良い伴侶は、これから先、どこを探しても見つかりませんよ。数多くのカップルを鑑定してきたわたしが断定します。ご両親を説得するのがあなたの役目です。お腹の赤ちゃんのためにも…」
「えっ!」
Aさんが妊娠していることは知らなかったようです。
「今日、初めて会ったあなたに、あれこれ言うのは僭越かもしれませんが、わたしの占い師としてのアドバイスは以上です。決めるのは、あなたたちふたりです」
……あれから10ヶ月余。
現在は彼の転勤で香港に在住。
来年2月には休暇を取って親子3人、一時帰国の予定とか。
お会いできる日が楽しみです。
今年も『渋谷・きらら館』をご愛顧いただきありがとうございました。
どうか、皆さん揃って佳い年をお迎えください。