「占い師の本懐」

三寒四温。

春の気配が感じられるようになりました。

とはいえ、コロナはまだまだ健在。

終息の日まで油断は禁物です。


節分の日。
午後1番のお客さまはFさんです。

「こんにちは。きらら先生、お久しぶりです」

「はい、こんにちは」と答えたものの、「ハテ?」

どこかで会ったような気がするのですが、マスクをしていることもあって、何処の誰だか分かりません。

「Fです。7年前に占ってもらったFです」

「7年前? Fさん?」

一度お見えになった方は、まず忘れないわたしですが思い出せません。

「ごめんね。少しだけマスクを外してくれるかな。――ああ、確か、大学卒業と同時に、ご両親の勧める相手と婚約するか、結婚よりはお医者さんになるために医学部に再入学するか、どちらの道に進むべきか?でお見えになった…」

「はい、そうです。良かった、思い出してくれて。すっかりご無沙汰してしまいましたwww」

ほうじ茶を淹れます。

「そう、両親の反対を押し切ってwww医学部へ再入学したんだ」
「怒っていた両親と距離を置くために東北地方の大学に…www」[

「7年といえば、もうお医者さん?」

「研修も終わり、晴れて小児科の医者になりました」

「そう。今も東北で?」

「忙しい毎日ですが、とっても充実しています。しばらくは大学病院に勤務する予定です。――でも、あの時きらら先生が、『今は結婚の時期ではありません。相手の男性との相性もイマイチです。わたしは医学部進学を勧めます』とキッパリした口調で言ってくれたことで、迷いもふっきれて医学部一直線。本当にありがとうございました。――本当はもっと早くお礼に来なければいけなかったのですが、遅くなってすみません」

「すべての面で大変な時代だけど、頑張ってね。――ご両親とは?」

「もうお転婆娘のことはあきらめたみたいでwww、結婚のことは言わなくなりましたwww」

「来年末から再来年の初めにピッタリの相手が現れそうよ」

「わっ、嬉しいな。その時はまた占ってくださいwww」

占い師冥利に尽きる節分の日でした。(合掌)

きらら(2/8)