「自分を信じて一打一打心を込めて」
恐るべしコロナウイルス。
外出自粛要請で賑やかな渋谷の街も様変わり。
いつもは渡るのに難儀するスクランブル交差点も人はまばらです。
「きらら館」も営業時間を短縮中。
まもなく6時、そろそろ看板を下げようと思っていたところへ久しぶりにTさんがご来館。
「開いててよかった。Tです。先生、お久しぶりです」
Tさんは女子プロゴルファー。
はじめてお見えになったのは数年前、プロテスト受験前でした。
「あらあら、こんな大変な時期に…。まあ、お座りになって珈琲をどうぞ」
「美味しい~。この味は喫茶店で出しても負けない味ですねwww」
「このクッキーもどうぞ。――元気そうだけど、どうしたの。何かあったの?」
「いつもはなかなか時間が取れないのですが、コロナ肺炎のせいで大会が相次いで中止になったおかげでwwwいつものように喝を入れて貰おうと、きらら先生に会いに来ました」
「“未来のスター”に喝だなんて恐縮ですwww。――最近の成績はどうなの?」
「コンスタントに予選は通過するものの、決勝ラウンドではイマイチ。何度か、上位に行けるチャンスがあったのですが、硬くなってラウンド後半に崩れることが多く、ずっとふた桁の順位に甘んじ放しです」
「Tさんはスポーツ選手に必要な強いメンタルの持ち主なのに、らしくないわね。――硬くなるなんて自分を信じてないから出る言い訳じゃないかしら。常に『自分を信じて、一打一打に心を込めて!』よ」
「そ、その言葉、わたしのデビュー前に先生から戴いたお手紙に書いてあったような…」
「ゴルフクラブを振ったこともないわたしが言うのもおこがましいけど、プロ選手はみんな技術的に光るモノを持っている筈。でも陽の目を見るのは、ホンのひと握りという厳しい世界で勝ち残るために必要なのは、不断の練習と、それ以上にどんな場面でも動じない強い精神力、平常心だと思うけど…」
「自分では平常心で打ってるつもりなんですが、ついつい勝ちたいと思う気持ちが出て硬くなっているのかもしれません」
ゴルフの話はひとまず横に置いて、Tさんの勝負運を占います。
「はい、出ましたよ。うん、今年はまだ優勝は無理だけど、年末あたりにひと桁の順位が1~2回、そして来年は大きなトーナメントで優勝できそうよ」
「わっ、ホントですか。嬉しいなあ。――受験前にはじめて占って貰った時も『上位の成績で合格します』とズバリのお告げでしたから、全然元気が出てきましたwww」
「もう一度『自分を信じて~~』のお札を送りますから、ゴルフバッグにぶら下げてね。ここぞという時に、心の中でつぶやけば百戦危うからずだからwww」
「ありがとうございます。きらら先生が背中を押してくれれば百人力ですwww」