『恋愛成就の秘訣はタイミング!』
お彼岸が春を連れてきてくれました。
自然の「律義さ」「几帳面さ」には脱帽です。
久しぶりに予約のお客様がない日。
こんな日には、『きらら館」を抜け出して目の前の東急百貨店に一直線。
運動のためにエレベーターを使わずに地下の食品売り場から、黙々と階段を上がって8階の本屋さんで垣根涼介さんの『室町無頼』(新潮社)を購入。
屋上に出てお日様を浴びながら、備え付けのベンチでページをめくります。
心身ともに爽快爽快。
贅沢な1時間の「お散歩」でした。
そんな某月某日。
お散歩から帰って珈琲を飲んでいるとお客様。
「こんにちは。いいですか?」
ン?――先程、百貨店の本屋さんで見かけた大学生と思しき男の子です。
「さっき本屋さんにいたでしょ」
「は、はい」
なかなかのイケメンなのに、表情に覇気がありません。
「どうしたの、元気を出して!」
「あ、あのう…」
「好きな子が出来たの?」
「は、はい。どうして分かるんですか?」
「顔に書いてあるわよ(笑)」
「告白したいんですが、いつ告白したら良いか、占って欲しいんです」
「同じ大学?」
「僕は高校生の時、アメリカに留学してましたから1歳年上なんですが、同級生で、同じゼミなんです」
ふたりの生年月日をお聞きして鑑定開始です。
「この子は美人でしょ?」
「はい。去年のミスコンで準ミスでした。でも、占いでそんなことまで分かるんですか?凄いなあ!」
少し言葉が滑らかになってきました。
「彼女は男勝りで自由闊達。今風の言葉でいえば、女子力マックスの”肉食女子”。反対に、あなたは優しい”草食男子”。――どうかなあ?」
「僕がひ弱なので、強い女性にあこがれるんです」
「あなたたちの相性は90点。とってもいいんだけど、現在の彼女に、そしてあなたにも『恋愛★』は全然、輝いていないし…」
「その★はいつになったら輝くのですか?」
段々、表情が真剣になってきました。
「今年の秋頃。そうね、10月~11月には、ふたり同時に『恋愛★』が巡って来ます。
「う~ん。半年以上も先ですね」
「今、告白して断わられるのがいいか、10月の”吉報”を待つか。どうする?――決めるのはあなたよ」
長考一番。――額に皺を寄せて考え込んでいます。
「分かりました。きらら先生の鑑定に僕の人生を賭けて、秋まで待つことにします。それまで、他の男に取られないように、僕がしっかりガードします」
「急いては事を仕損じる。――恋愛はタイミングだからね」
「8月か、9月にまた来ますから、よろしくお願いします」
「それまではしっかり勉強するのよ」
「はい。頑張ります」