『未来の大スター』
「お~寒い、寒い」
独り言を言いながらエレベーターを降りたら、目の前にYちゃん。
「おばちゃん、こんにちは」
「あれっ、Yちゃん。どうしたの、ひとりで?」
「ママが『デパートで買い物して行くから、先に行って待ってなさい』って」
Yちゃんは、これまでに何本ものテレビや映画に出演している、とっても可愛い子役タレントです。
お母様のCさんは、某広告代理にお勤めしていた時、『きらら占い教室』に通っていた、いわばわたしの一番最初の”教え子”なんです。
彼女はその後、現在のご主人と結婚。産まれたのがCちゃんというわけです。
Yちゃんと出演したドラマのことを話しているところへCさんが笑顔でお見えになりました。
「きらら先生、明けましておめでとうございます。娘ともども、今年もよろしくお願いしま~す」
「おめでとうございます。わたしの方こそよろしくね」
「Yちゃん、随分がんばってるじゃない。この前もテレビで観たわよ」
「まだまだだけど、きらら先生に芸名を付けて戴いたお蔭で、ボツボツ良い役がもらえるようになりました」
「『あせらず、あわてず、無理をせず』――Yちゃんがタレントとして華を咲かせるのは5年先だからね。将来、本気で芸能界で活躍したいのなら、今はいろんなことを勉強させてあげた方がYちゃんのためだと思うわよ」
「お爺ちゃんやお婆ちゃんは孫可愛さで喜んでいますが、主人はあまり芸能界が好きでないようで…」
「まあ、今の段階で決める必要はないから、自然の流れで、芸能界に進むもよし、他の分野に進むもよし。YちゃんにはYちゃんの人生があるんだから、とにかく神経質に考えないことね」
「才能も必要だけど、運もあるし、足の引っ張り合いもある厳しい世界ですから、わたしもその辺のことは分かっているつもりです」
「Yちゃんは、学校へはキチンと行ってる?」
「わたし、お芝居するのは好きだけど、学校はもっと好きだから、お仕事がない時には遅刻しないで行ってるよ」
Yちゃんがクッキーを頬張りながらVサインを出します。
「エライ、エライ。文武両道。しっかり頑張ってよ」
「ママ、『ぶんぶりょうどう』ってな~に?」
「お勉強もお芝居も、一生懸命頑張りなさいということよ」
「は~い」
1月某日。和やかな会話に花が咲いた新春の「きらら館」でした。