「結婚は『家柄』よりも『人柄』!!」‐③‐
まだ5月半ばだというのに、すっかり夏の気配。
7月、8月になったらどうなるのでしょう。
先が思いやられます。
さて、先週の続きです。
A子さん、B先生、そしてTさんの期待を背に、いざ、京都へ往かん!――いよいよ明日、A子さんのお母様と“ご対面”という日の前日のことです。
「ごめんください」
次の予約の方がお見えになるのには、1時間ほど早いのですが、入口付近で関西なまりの声がします。
きらら「はい。どうぞ、お入りください」
紬でしょうか、上品な和服姿のご婦人です。
Wさん「初めまして。A子の母親でございます。いつもお世話になっております。――義母から、『明日、きらら先生が娘のために、わざわざ京都まで足を運んで下さる』というのを昨日、聞きまして…」
きらら「はい。その予定でしたが…」
Wさん「義母と娘が、先日来、きらら先生のことをしきりに口にするものですから、京都にお越し戴く前に、是非お会いしたいと思い、失礼ながら、ご連絡もせず上京してきました」
先手を打たれて?しまいました。
きらら「Wさんの上京は、TさんとA子さんには内緒…ですか?」
Wさん「もちろんですわ(笑)」
ひょっとして、娘に変な知恵をつけないで欲しいと文句を言いにきたのでしょうか?
しかし、それにしては眼に険しさが感じられません。
Wさん「実は、わたしも主人と結婚する前に、京都の高名な占いの先生に観てもらったのですが、もちろん、主人のことは大好きだったのですが、件の先生の『この方なら間違いない』という言葉に押されて、周囲の反対を押し切って結婚を決めたんですよ(笑)」
あれれ、予想外の方向に話が進んでいます。
きらら「そうした“事情”をA子さんはご存知なのですか?」
Wさん「娘はもちろん、主人も義母にも言ってません。初めて“告白”することですから…(笑)」
お見えになってから30分も経たないのに、和やかな雰囲気です。
Wさん「今日は、娘の結婚について、きらら先生の率直なご意見をお伺いしたいと思って…」
きらら「確かに、年齢の差はありますが、Tさん、A子さんにも言ったように、B先生は申し分ないお相手です」
Wさん「正直なところ、我儘な娘には、B先生のようなおっとりした性格の方が伴侶にふさわしいと思っています」
きらら「でも、A子さんは『両親は、家柄の違いを理由に反対している』と…」
Wさん「主人もわたしも内心では、今の時代に家柄云々を問題にするのは、どうかな?と思っています。しかし、自慢ではなく、T家は京都では、それなりに由緒ある家系です。娘には、好きな相手と一緒になって貰いたいと思う反面、見栄と言われればそれまでですが、世間体を考えた結婚をして欲しいという気持ちもあって…」
きらら「Wさんのお気持ちは判ります。でも、家柄も大切ですが、それより大事なのは、A子さんの幸せです。結婚するのはA子さんであり、そのA子さんが結婚する相手は、『家柄』ではなくB先生です。――わたしはプロの鑑定師として、A子さんとB先生は、運命の“赤い糸”で結ばれた、しかも最良のタイミングで出会った“最良のカップル”であると言っても過言ではないと思っています」
Wさん「……」
しばしの沈黙です。
でも、Wさんは、どこか嬉しそうな表情です。
きらら「ところで、ご主人は、どう思っていらっしゃるんですか?」
Wさん「お前に任せると言ってますが、義母と娘の“攻勢”に、今では“賛成組”になってしまったようです(笑)」
きらら「『家柄よりも人柄』――くどいようですが、このことは、多くの幸せな結婚とそうでない結婚を見て来たわたしの“哲学”です。――心の底から好きな相手と、運命的なタイミングで結ばれる。このふたつの条件さえ満たせば、将来、どんな苦労があろうと、どんな困難な事態に直面しようと、必ず克服できるものです」
Wさん「どうしてなんですかね?」
きらら「霊能者でもないし、千里眼の持ち主でもない、わたしには判りません。しかし、『たかが占い、されど占い』――占いでは、それがハッキリと出るのですから不思議です。――僭越ながら、Wさんとご主人も、このうえないタイミングで出会い、結婚されています。もちろん、これまでも高さ、深さはともかく、山あり、谷ありの人生だった思います。でも、力を合わせて乗り越えることが出来たのは、おふたりの深い愛情と、結婚のタイミングがバッチリと合っていたからだと思います」
Wさん「上京してきた甲斐がありました。今日、お話して、きらら先生を京都にお呼びしたいと言った義母と娘の気持ちが、よく判りました。娘の結婚につきましては、京都に帰って、もう一度、ふたりの気持ちを確かめて最終結論を出したいと思っています。――ところで、結婚式はいつ頃が良いでしょうか?」
もはや、「結論」は出たも同然です。(了)
きらら(5/18)
photo credit: 2010.11.18 京都駅_001 via photopin (license)