「男は愛嬌、女は度胸」

『秋深し 隣は何を する人ぞ』

松尾芭蕉の有名な俳句ですが、「お節介と親切」は紙一重。

今の時代、隣の人をあれこれ詮索していると「プライバシーの侵害」だなんて怒られるかもしれませんね。

某月某日、いつものように定刻に「きらら館」に到着。

エレベーターのボタンを押そうとしたところへ、「先生、きらら先生!」とわたしを呼ぶ声。

「ハテ、誰かしら。今日の予約は1時30分からなのに…」

後ろを振り返ると、どこかで会ったような気がする女性がニコニコ笑っています。
宝塚の舞台から降りてきたような20代後半と思しきハイカラなお嬢さんです。

「う~ん。ごめんなさいね。見覚えはあるんだけど、お名前が出てこなくて…」

「わたしです。R子です。お久しぶりです」

「R子さん?」

「10年ぐらい前かな、わたしが高校生の時に、先生がTホテルのイベントに出演されているときに鑑定していただきました」

そう言われても…。すっかり忘却の彼方です。

「まあ、こんなところでは何だから、上で珈琲でも飲む?」

「はい。珈琲は大好きです」

エレベーターの中でも、何とか思い出そうとあれこれ考えました。

ん?――名前はハッキリしませんが、何となくぼんやりと浮かんできました。

「あっ、思い出した。確か、新潟県の高校2年生か、3年生だった…?」

「は~い。そうです」

「お母様とご一緒でしたよね?」

「父もいました。家族全員でTホテルに泊まっていたのです」

「お母様もお綺麗な方でしたよね。お元気ですか?」

「おかげ様で今も新潟で元気に暮らしています」

ボンヤリしていた記憶が、ようやくハッキリしてきました。

「思い出したわよ。あの時、あなたは将来の進路について占って欲しいと…」

「そうです。母は父の健康について占ってもらいました。きっら先生の鑑定は『周囲は反対するかもしれませんが、パターン化したお仕事ではなく、自分が楽しいと思えるお仕事を選んでください。芸術方面では音楽家。学校の先生もいいわね』というものでした」

さすがに、そこまでは覚えていません。
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「あれから音楽大学に進学、卒業後ドイツに留学して、今年の初めに帰国。現在は母校で講師をしています。――きらら先生の鑑定通りの人生を歩んでいます」

「結婚はまだ?」

「好きな人はいるんですが、結婚はまだ考えられません」

「あなたは芯が強くて、いつも凛としているから、男性の方が近寄り難いんじゃないかしら?」

「結婚は無理でしょうか?」

「ちょっと待ってね」

真剣な目でわたしの手許を見つめています。

「大丈夫。来年の今頃、ちょっとひ弱だけど、あなたのことを心底、思ってくれる素敵な人が現れそうよ。結婚は再来年かな。あらら、”できちゃった婚”かもよ?(笑)」

「嫌だあ(笑)」

「人生いろいろですから、それもいいじゃない(笑)」

「きらら先生は、私の人生をすべてお見通しですから(笑)…来年現われる”ひ弱な王子さま”を待つことにします(笑)」

『男は愛嬌、女は度胸』――時代は変わりました。

「母もきらら先生に会いたいと言ってますので、来週またお伺いします」

「お母様には美味しい煎茶で『お・も・て・な・し』致しますとお伝えください(笑)」

きらら(10/16)

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