「燃えるのは今でしょ!」
ようやくの涼しい秋。
『露の世は 露の世ながら さりながら』 (一茶)
わたしの好きな俳句です。
今日最終のお客さまは、来週から東南アジアの病院に看護師としてお勤めするWさんです。
「こんばんは。遅くなってすみません」
「はいはい、お待ちしていましたよ。いよいよ来週は出発ね」
「あれこれ準備が忙しくて…」
心づくしの珈琲を淹れます。
「しばらく先生の珈琲とお別れなので、よく味わって飲まなくちゃwww」
「去年の今頃かしらね、あなたがお見えになったのは」
「そうですね。――病院に海外勤務の看護師募集の案内が来て、是非、行きたいと思ったのですが、父と母が鬼の形相で大反対。諦めようかな、でも行きたいなあと悶々としている時に、占いでダメなら止めようとお邪魔したのが『きらら館』でした」
この世の不幸を一身に背負ったような元気のない顔で、何事かと思ったことを思い出します。
「ところが、きらら先生の鑑定は『願ってもないチャンス。絶対に行くべきよ』と想定外のものでした」
「せっかく大きな<飛躍★>が巡って来ているし、そのうえ英語と仏語にも堪能なのに、わたしにすれば諦めることの方が想定外だったわよwww」
「『限りある人生だもの、燃えるのは今でしょ』――きらら先生の言葉に、ようし誰が何と言おうと挑戦しようと勘当覚悟で毎日のように両親と喧嘩、根負けして最後には『好きにしなさい』って…www」
「向こうには何年ぐらいの予定?」
「契約では2年ですが、評価が高ければ延長もあるとのことです」
「日本の病院と違う苦労することもあるでしょうが、何より健康が一番。体に気を付けて行ってらっしゃい。――はい、これは心を込めて作ったお守り。頑張ってね!」
「ありがとうございます。挫けそうになったこのお守りをギュっと握りしめて先生の言葉を思い出します」