『その日に備えて女を磨くべし!』
梅雨の合間に時々、真夏。
日焼けは大敵。
しばらくの間、日傘は必需品です。
「先生、やっぱり彼にフラれちゃいました~」
珍しく予約時間より20分も早く、引きつった笑いを浮かべたSさんが顔を出しました。。
「どうしたの、こんなに早く?」
「あれほど、きらら先生に『お友達ならともかく、深い関係になるのは賛成できないわ』と言われたのに――ごめんなさい」
一転、にわかに掻き曇り。――大粒の涙がポロポロ。まさに号泣です。
「あらあら。さあ、座って。外は暑かったでしょ。冷たいジュースを飲んで落ち着いて…。愛媛の100%のミカンジュースよ」
ゴクゴク。一気に飲み干して、また涙です。
Sさんが、彼との相性を占って欲しいと見えたのは4ヶ月前でした。
相性も知り合った時期も最悪。
早晩の別れは必然でしたが、ニコニコ顔のSさんに頭から「絶対ダメ!」というのも酷な話。
遠回しに彼との交際に“レッドカード”を出したのですが、案の定、破局を迎えたようです。
「わたし的には、一生懸命彼に尽くしたつもりだったのに、昨日、突然『別れよう』って言われてしまって…。わたしの何がいけなかったのでしょうか?」
まだ、彼に未練たっぷり。泣きじゃくりながら、ここまで言うのがやっとです。
かくなるうえは、ストレートに言うしかありません。
「最初にも言ったけど、お互いの“恋愛★”が全然、輝いていない時に出会ってるし、肝腎のふたりの相性も30点台。あなたがどうとか、彼がどうとか言う以前の問題よ。普通なら1ヶ月も続かない最凶の組み合わせだったのに、あなたの“努力”で4ヶ月も続いたと思うんだけど、これ以上ズルズルとお付き合いしていると、ふたりとも抜けられない泥沼に嵌まり込んでいたと思うわよ」
「わたしがバカでした。確かに、きらら先生は『もう少しすれば、あなたにふさわしい人が現れる』と言ってくれたのに、それを無視して…」
「これも経験よ。この経験を『良い経験』にして幸せを掴まなくちゃ」
オレンジジュースをお代わりして、少し気持ちが落ち着いてきたようです。
「不思議なもので、ふたりの“恋愛★”がバッチリ輝いている時に出会い、相性度数が88点以上のカップルはわたしの経験上、90%以上の確率でゴールインするわね」
「わたしと彼は、それと正反対の組み合わせだったのに、そうとも気付かず、彼と結婚できるという幻想を追って無駄な努力をしていたわけですね」
「そう決めつけるのは間違いよ。無駄にするも、しないも、これからのあなた次第。今の段階で無駄だったと決めつけるのは早計じゃないかしら」
「わたしの“最良の恋愛★”が巡ってくるのはいつ頃ですか?」
「タイミング的には半年後。今年の暮れには大きい“恋愛★”が輝くはずよ。もっとも相手との相性度数があるから、まだ最良の伴侶とは断定はできないけど、いつまでもメソメソしていないで、その日に備えて、しっかり女を磨かなきゃ。いくらタイミングが良くても、棚ボタを期待してちゃダメよ」
「はい。何だか目の前が明るくなってきたような気がします…。わたし、頑張ります!」
泣いたカラスがもう笑った!――ようやくSさんの顔に笑みが浮かんできました。
「そうよ、その意気。ピカピカに磨いておけば、きっとお似合いの彼が現れるんだから、頑張ってよ」
「はい!――年末にお似合いの彼が現れますように…(笑)」