「秋空を 二つに断てり 椎大樹」

秋空1年に1回、俳句を書いた短冊をお土産に来館してくれるM先生が、今年もまた顔を見せてくれました。

先生は御年70余歳。斯界では知る人ぞ知る書道の達人です。

M先生「お元気でしたか? しのぎやすい季節になったので、足を運びました」

きらら「お蔭さまで。先生もお変わりありませんか?」

M先生「いやいや、『老兵は消え去るのみ』。そろそろお迎えに来てほしいと、念じる毎日だよ(笑)」

きらら「何を仰います。もっともっと先生の短冊を戴こうと思っているのに、いつまでも元気でいてくださいよ。いずれ『何でも鑑定団』に出そうと思っているんですから(笑)」

タイトルに掲げたのが、その時戴いた短冊に書かれた高浜虚子の俳句です。

いつもなら占いはそっちのけで、そこからは延々と先生の「書道講義」が始まるのですが、その日は違いました。

M先生「私の甥っ子が、何を思ったのか、突然、次の県会議員選挙に立候補したいと言いだして今、親戚中が大騒ぎの真っ最中なのです。そこで当選云々以前に、果たして政治家に向いてるかどうか、是非とも鑑定して欲しくて……」

しっかりした会社にお勤めなのに、それを捨てて、いきなり政治の世界に徒手空拳で飛び込もうとするのですから、M先生ならずとも困惑するのは無理もありません。

ひょっとすると、M先生は、私の口から「政治家に向いていない」という答が出るのを期待していたのかもしれません。

しかし、私も鑑定師のはしくれです。心を鬼にして(?)私情を交えず鑑定することにしました。

きらら「正直に言いますね。甥っ子さんは、正義感が強く、人望もあるし、珍しいぐらいの大きな“リーダー星”の持ち主です。組織の一員で納まるタイプではありません。むしろ今まで大人しく会社勤めをしてこられたのが不思議です。ここにも多くの政治家の方がお見えになりますから、政治の世界が理想通りに運ばないのは、門外漢の私にも分かります。しかし、彼の資質は、まさに政治家向き。決して、一時の気まぐれや思いつきだけで選挙に出ると言ってるのではないと思います」

M先生「ふ~む。…実は、彼のことを幼い頃から知る私も内心では、きらら先生と同じ考えだったのですが、家庭もあるし、一族郎党がこぞって反対するものですから多勢に無勢。立候補を思いとどまるように説得していたのですが…分かりました。今日からは、私だけでも彼の“応援団”に回りたいと思います(笑)」

さて、恰好よく言ったものの、もし甥っ子さんが立候補することになれば、私も責任重大です。でも、彼のこれからの5年間は最強の運勢です。晴れて金的を射とめるに違いありません。

きらら(9/30)

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