就活学生に贈る言葉
「掘井九軔 而不及泉 猶為棄井也」

Spring is coming多くの方からお電話を戴いた先週の孔子に続いて、今日は調子に乗って(?)「孔子」と並び称される、もうひとりの思想家・孟子について書いてみます。

孟子が活躍したのは孔子の時代から200年後、各国が生き残りをかけて領土の拡張に血眼になっていた戦国時代です。当時は力づくで相手を押さえ込む「覇道政治」、「利益至上主義」の考えが横行していました。(何だか、今の世相に似ていますね)

そうした時代にあって敢然と孟子が主張したのは「王道政治」、つまり「上に立つ君主が、仁義の徳を身につければ、自然に国民は感化される」「人を信じてこそ、初めてその人間の善なる部分を引き出すことができる」という「人間性善説」に立った教えでした。

さて、タイトルに掲げた「掘井九軔~~」は私の好きな言葉のひとつで、「井を掘ること九軔(きゅうじん)、而(しか)も泉に及ばざれば、なお井を棄(す)つと為すなり」と読みます。(一軔は八尺。つまり九軔は七十二尺、約24メートルです)

直訳すれば「井戸を掘ろうと、せっかく九軔も掘り進んだのに、地下水脈に当たらない。嗚呼、もう駄目だ、と諦めてしまっては、それは井戸を棄てたとのと同じことだ」――すなわち「苦労してやりかけた仕事を途中で投げ出してしまっては、それまでの苦労が水の泡になる。どうせやるなら、最後まで自分を信じてトコトンやり通すべきだ」と言っているのです。

孟子は、「事業」を「井戸掘り」に譬えて、この言葉を残しているのですが、これを今の時代に当てはめれば――「すべてにおいて複雑化、多様化した現在にあっては、事業家やビジネスマンは、専門的な知識や技術を身につけることを求められている。しかし、それは1年や2年で習得できるものではない。これこそが自分の生きる道だと決めた以上は、初志貫徹、少々の蹉跌や挫折があっても、あっさり諦めてはならない」という意味になると思います。

数年前、鑑定させて戴いた際に孟子談義で盛り上がったのがご縁で、以来1年に4度、四半期ごとに私の許に足を運んでくれる、ある公開企業の社長が度々、口にするのが、「一朝一夕に科学が進歩、時代が目まぐるしく変わっても、人間の本質はそう変わらない。どんな分野でも、3年我慢すれば半人前になれる。そして10年辛抱すれば1人前になる。新入社員の採用担当者には、出身学校とか、学校の成績よりも、ウチの会社で10年間頑張れる人物かどうか、その一点だけを見極めるようにと厳命している」という言葉です。

歯を食いしばって夢を持ち続けることこそ行動力のエネルギー!――ガンバレ、就活生!!――孟子の言葉は、就職活動に励んでいる学生に贈るエールです。

きらら(3/18)