「長所を誉めて 短所を咎めず」
複雑な世相を反映しているのでしょうか、最近、『三国志』を愛読する若い人が増えているそうです。
『三国志』は、魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)の三国が生き残りを懸けてシノギを削った、今から1800年ほど前の時代を描いたものです。
期間からいえば、わずか数十年間のことですが、動きが激しい時代だけに、何かにつけ慌ただしい現在と相通ずる部分があるのが人気の秘密かもしれません。
加えて、劉備、諸葛孔明(蜀)、曹操(魏)、孫権(呉)と一度は耳にしたことがある“スター”たちが活躍していることも理由のひとつとして挙げられると思います。
ところで、この『三国志』にも2種類あり、ひとつは晋の時代の歴史家・陳寿による「正史」であり、もうひとつは明の時代の羅貫中が著した「物語」(『三国志演義』)です。
前者は文字通り、三つの国の興亡を公平な目線で、学術書のように淡々と描いているのに対し、後者は適当にフィクションを盛り込み、善人と悪人を対比させて書かれています。
当然のことながら、後者の方が断然面白いのですが、基本的な部分は同じです。是非、偉人と凡人、聖人と俗人、善人と悪人が織りなす国家の命運を懸けた政治ドラマの醍醐味を味わって欲しいものです。
「貴其所長 忘組其所短」(その長ずる所を貴び、その短なる所を忘る)……これは、呉の孫権の言葉ですが、『三国志』のなかで、私が一番、気に入っている文章です。
その意味は、「長たる者、部下を使う時は、短所に目くじらを立てず、反対に長所は誉めるべし」というものです。
なるほど!……組織内にあってはもちろん、スポーツ指導然り、学習指導然り。……孫権は、『三国志』のなかでは“脇役”的な人物として扱われることが多いのですが、なかなかの名指導者であり、無類の人使いの達人と言っても過言ではありません。
きらら(4/22)