「言わぬが花」

梅の実が熟す頃に降る雨だから梅雨。

何とも風情がある言葉なのに、梅雨入りもないままに、東京は一気に夏の気配。

令和3年の6月は実に無粋です。

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築地のおじいさまがご来館。

開口一番、「射って来ましたよ」

「コロナワクチン注射ですか。――この間は、俺は若い者が射った後、余ったら射とうかなと仰っていたのに、どうしたのですかww」

「いや、まあ……息子が勝手に予約を取ったもので、仕方なく~(苦笑)」

照れながら、言い訳しています。

「副作用はありません?」

「2日ほどは腕が痛かったが、今のところ大事ないな。――それはともかく、今日は真面目な相談があって~」

「はいはい、いつも人生の何たるかを講義して下さっているんですもの、おじいさまのお願いですもの、たとえ火の中、水の中。何なりとお申しつけくださいwww」

「実は、今、終活の最中なんだ、ワシの命日がいつになるか、教えて欲しいんだが…」

「いやいや、他のことなら何でも協力しますが、そればかりは…。おじいさまの命日はまだまだ先の話ですよwww」

「元来、占いの類いはあまり信用してなかったのだが、きららさんの占いは別格。孫全員の名前をきららさんに付けてもらったし、そのうえ最初の孫の縁談の鑑定までお世話になったのに、今日は冷たいじゃないかwww」

「わたしはおじいさまの一番弟子ですものwww『子孫に美田を残さず』を信条とするおじいさまのお考えは、分かりすぎるほど分かりますが、ダメなものはダメですwww。――生意気なようですが、寿命は天からの授かりもの。授かった命を精一杯、生きるのが、この世に生を受けた者の務めです。命は有限です。否が応でもお迎えの日は来ますから、その時に『良いこと、悪いこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、満足したこと、辛かったこと、色々あったが、楽しい人生だったな』と思えるように毎日を生きることが大切だとわたしは思っています」

「今日は形勢逆転。いつもと風向きが逆だなwww」

「『人生には、言わぬが花ということもあるよ』と教えてくれたのは、おじいさまですよwww」

「そうだったかな」

「確か、2回目か、3回目にお見えになった時です」

「まさに『負うた子に教えられ』だな。――よし、きらら先生の教えの通り、残り少ない命?を悔いのないよう生きるとしようか!www」

きらら(6/14)