「浮気虫封じをお願いされました」

東京五輪が来年に延期になりました。

その日を目指して切磋琢磨してきた選手たちには気の毒ですが、
禍を転じて福と為す。

この1年を有意義に活かして是非、メダルを目指して欲しいものです。

今日は祭日。
朝一番のお客さまは、東海地方某県からご夫婦でお見えのAさんです。
お二人とも歯医者さんです。

「はじめまして。友人に紹介されたAです。どうぞよろしくお願いします」

「はい。お話は伺っています。どうぞ寛いでください」

挽きたての豆で自慢の珈琲を淹れます。

「新幹線で近くなったといえ遠いところをお疲れでしょ」

「コロナ騒ぎのせいか、新幹線はガラガラでしたが、東京は予想以上に人が多くて驚きました」

ひと息入れて、本題に入ります。

「先日も少しお話ししましたが、結婚以来、10年近くなるのですが、子宝に恵まれず、大学時代の同級生が所長を務める児童相談所から養子(男の子・2歳)を迎えようと思っています。養子に迎えるからには当然のことですが、我が子と同じ気持ちで育てるつもりです。ついては、その子をどんなふうに育てたらいいか。なにぶん初めてのことですから、その心構えを教えて戴きたいと思って参りました」

「おふたりのご両親は?」

「父は既に他界していますし、私の母も妻の母も老人施設に入っていますので…」

Aさんご夫婦と養子になる男の子の生年月日をお伺いして鑑定開始。

「いいですねえ。この子とご主人の命式は瓜ふたつです。奥さんとも相性はピッタリですよ。とっても賢いし、Aさんよりイケメンになりそうですよwww。将来、歯医者さんになって跡を継いだら流行ると思います。そうねえ、難をいえば、ご主人と一緒で女難の相があることです」

今まで黙って聞いていた奥さまが口を開きました。

「まあ! 先生、聞いて下さいます。今まで何回、主人の浮気に泣かされたことかwww。これから親になるというのに、いい加減止めて貰わないと、教育上も良くないですから…。何か妙薬はありませんか」

「おいおい、今日は子どものことで相談に来てるんだぞ」

「あなたは先に帰っていいわよ。わたしにとっては、子どもと同じぐらい、あなたの女癖の悪さが問題なんですから…」

鉾先がご主人に向きはじめました。

「ご主人の浮気病は間もなく治まりますよ。月が替わったら“女難”の輝きが鈍ってきますから、いくら努力してもモテませんよwww」

「そら見ろ、最近の俺は真面目だろ。もう“卒業”したのだから…」

お替わりの珈琲を出して熱い会話を冷まします。

「どうぞ、お子さんのためにいい両親になってくださいね。上京されることがあったら、またお越しください。それと奥さん、ご主人の浮気の虫が治まらないようならお電話ください。わたしが“浮気封じ”のおまじないを唱えますから…www」

「はい。その時は是非、是非、お願いします」

「畏まりましたwww」

きらら(3/30)