「関鯖のお刺身」

3月、弥生。

上級学校へ、そして社会へ旅立ちの月です。

初心を忘れず頑張ってください。

昨年に続き、敬愛する築地のお爺さまからのご招待。
いつものお寿司屋さんです。

まずは生ビールで乾杯。

「きららさんは鯖のお刺身だったね」

「はい!」

滅多に食べられない九州直送の新鮮な鯖(関鯖)です。

「美味しい~」

ひと切れ、ふた切れ…
我ながらはしたないと思いつつ、あっという間に1人前をペロリ。
至福の時間です。

「気持ちいいねえ。そんなに美味しそうに食べてくれると…」

眼を細めるお爺さま。
ひと回りぐらいしか年齢は離れていないのに、お爺さまの前では娘の心境です。

ビールを飲み干したところへ、今度はお刺身の盛り合わせに焼き白子。

「わ~っ。このホタテ貝、甘~い。ヤリイカも新鮮でコリコリ」

まるで欠食児童みたいなわたし。

「ウニも美味しそう。この貝は何ですか?」

ビールもすすんで、またたく間にペロリ。
(あ~恥ずかしい)

ここからお爺さまの政治・経済談義。
昨今の内外の政治情勢から経済の先行きについて、分かり易い言葉での解説に箸を止めて聞き入ります。

「政治も経済も所詮は人間のすること。歴史が物語っているようにローマ時代以来、科学は進歩しても、悲しいかな寿命に限りのある人間は…」

「地震は自然の為せるワザだから、いつあるか分からないが、世界中のあちこちで独裁政権が誕生していることを考えれば、そう遠くない時期に戦争があるんじゃないかな。その時は私はもうあの世だけどね…(笑)」

そして最後は人生論。

「籠に乗る人 担ぐ人 そのまた草鞋を作る人。――世の中、籠に乗る人ばかりでは困るだろ。何でもいい、自分の好きな道に一心不乱に打ち込むことこそが、その人にとって一番、幸せなことだよ」

納得したところへ、茶わん蒸しと大トロをはじめ握りを6貫。
う~ん、美味しい!

お爺さま、ごちそうさまでした。

きらら(3/4)