『自分の人生は自分で…』

この暑さは、この先まだ1ヶ月も続くとか。

もううんざり。

と、ぼやいたところで詮なきこと。

早寝早起きでお彼岸を待つしかなさそうです。

お盆。
さすがに渋谷の街も静かです。
早仕舞いしようかな?

そこへ「こんばんは、まだいいですか?」と、かわいい声。

「大丈夫よ。どうぞ」

まるでモデルのような可愛い女の子です。

「高校3年生ですが……迷っています」

鞄にぶら下げたグデダマを撫でながら小さな声。

「将来、どんなことをやりたいの?」

「建築家になりたいと思っています」

「それでどうして迷っているの?」

「両親は医学部に行って欲しいと…」

「お父様はお医者様?」

「いえ、父は公務員です。でも、お医者様になりたかったけど、なれなかったので、ひとり娘のわたしに自分の夢を叶えて欲しいって…。この前、工学部へ行きたいと言ったら、がっかりしたような顔をされて…」

生年月日をお伺いして「職業運」を占います。

「創造的なセンスに溢れていて、何事にもコツコツ取り組むあなたには建築家、デザイナーはピッタリ。次にいいのは学者、研究者。点数でいえば、それぞれ90点と85点。う~ん。お医者さんは65点かな」

ホッとしたような顔。

「あなたとお父さまの『親子度数』は、ほぼ満点です」

「はい。ファザーコンプレックスではないのですが、母より父の方がウマが合うというか、ホッとするんです」

「でも、ウマが合うのと、あなたが人生を生きるかは関係ありません。月並みな言い方ですが、あなたの人生はあなたの人生。お父さまの人生はお父さまの人生です。お父さまに喜んでもらいたいために好きでもない医者の道に進むのと、あなた自身がなりたいと思う建築家のコースを選ぶかは、最後はあなたの決断次第だけど、適性から考えて、わたしは工学部を受験することをお奨めしたいな…」

「そうですよね」

「お母さまの意見は?」

「母は、自分の行きたい方向に行けばいいって…」

「もう一度、お父さまに自分の考えをキチンと話してみてはどうかしら。親子度数が97点ですもの、きっと賛成してくれると思うけどなあ」

お見えになった時より、顔の輝きが増したような…。

「はい。早速、今夜、父とひざ詰めで話してみます」

きらら(8/13)