「子を思う親心vs好きな道に賭けたい娘」
あれこれ問題はあったものの、いよいよ5日からブラジル・リオデジャネイロでオリンピックが始まります。
国家の威信を背にした世界中のアスリートたちの戦いには、たとえルールはよく分からない種目でも(笑)、ついつい手に汗を握ってしまいます。
ガンバレ日本選手!――メダルを目指して頑張ってもらいたいものです。
午後12時少し前に、『きらら館』に到着。
いつものように珈琲を淹れる準備をしていると、玄関先で人の気配がします。
きらら「どうぞ~。お入りください」
入ってきたのは、ゴロゴロ鞄を引いたかわいいお嬢さんです。
きらら「まあまあ、汗びっしょりで。暑かったでしょ。さあさ、クーラーに当たって…」
Sさん「ありがとうございます。Sと申します。占いは初めてです。どうかよろしくお願いします」
礼儀正しさに、ついつい心が和みます。
Sさんは来春卒業予定の大学生。就活のために山陰地方某県から上京。その帰りに『きらら館』を訪ねてきてくれたとのこと。
きらら「就活の首尾はどうでした?」
Sさん「4社ほど回ったのですが、緊張してしまって…(笑)」
汗が引いたところで、さて…。
Sさん「卒業後の進路をめぐって両親と意見が対立。どうしたらいいか、迷っています。わたしは東京で就職したいのですが、両親は、ひとり娘を理由に『地元でお勤めして欲しい』の一点張りで、親娘間で”冷戦状態”なんです」
きらら「東京か、地元かは別にして、Sさんは、どんなお仕事に就きたいの?」
Sさん「出版社です。アニメが大好きなので、できればマンガの編集者になりたいと思っているのですが…」
Sさんは、自分でもマンガを描くそうで、スケッチブックを取り出して、サラサラとわたしの似顔絵を描いてくれました。
目がパッチリでシワもなく、ン十年前も若返り!(嬉しい)――なかなかの腕前です。
きらら「ご両親は、どこをお勧めなの?」
Sさん「地元の金融機関です。頼んでもいないのに『担当者には根回ししてあるから大丈夫だ』って。とにかく押しつけがましいんです」
「子を思う親心」vs「自分の好きな道に賭けたい娘」――難しい問題です。
ともあれ、、「職業運」を占ってみました。
『性格は温厚で実直。職業度数は、公務員、銀行員など経理・事務関係が86点。自由業的な職種や起業は61点』
わたしのモットーは「自分の好きなことに全力でぶつかるべし」――とはいえ、適性も考えず、漠然とした「あこがれ」だけでは務まらないのが現実です。
わたしの鑑定にSさんの顔が曇ります。
S「でも…」
別にご両親の”味方”をするわけではないのですが、Sさんの場合、あこがれ一本の挑戦はいささか無謀です。
きらら「東京か、地元か。どちらの道を選ぶにしても決めるのは、Sさん、あなた自身です。――お節介かもしれませんが、良ければ、懇意にしている方で出版社の方をご紹介しますので一度、話を聞いてみてはどうですか。それで自分自身が得心、『どんなに厳しくてもやってみよう!』と思えるようなら初志を貫徹してください」
Sさん「はい。是非、是非。よろしくお願いします。それで自分が想像していた世界と違って、わたしに不向きということが納得できれば、上京は断念。両親の意見に従います」
翌週、再び上京。
紹介した出版社訪問を終えたSさんから報告がありました。
「きらら先生、その節はありがとうございました。初対面にもかかわらず、親身になってアドバイスして戴き感謝しています。ご紹介戴いた出版社の方は、熱心にわたしの話を聞いてくださいました。『出版業界はどこも厳しい状況だ。しかし、あなたのマンガはまだまだ粗削りだが筋がいい。出版社に入るより、地元でお勤めしながら作品を描いてはどうか。そして、これはと思うのが描けたら送って欲しい。プロになるというのなら協力は惜しまない。頑張ってください』と嬉しいお言葉を戴きました。今まで面接すらしてもらえなかったに、親切に教えてくださり、もうそれだけでも満足。スッキリしました。卒業後は、故郷に腰を据え、生意気ですが(笑)、しばらくは”2足の草鞋”で頑張りたいと思います。~~夏休みに両親と一緒に御礼にお伺いします」
これも何かのご縁です。
ガンバレ、ガンバレ、Sさん!
きらら(8/1)