「ときめき貯金」(続)

14592022848_ba4d9f06fb桜の花が散った途端に冬に逆戻り。
本当の春にはもう少し時間が掛かりそうです。

さて、先週の続きです。

Wさんの上京当日。わたしも初めての“経験”に朝から緊張のしっ放しです。

ご両親の勧めるお見合い相手のAさんではなく、Wさんが思いを寄せるBさんとの結婚が「吉」と鑑定したわたしに文句のひとつも言いたいし、何とか娘に翻意させて欲しいと要請されるのではないか?と想像したからです。

娘の幸せを願うご両親にすれば当然のことです。
しかし、わたしもプロの鑑定師として「BさんこそがWさんの伴侶にふさわしい人」と太鼓判を押したのですから、信念を曲げることはできません。

Wさん「きらら先生、この前はどうもありがとうございました。今日は両親と一緒に押しかけました(笑)。よろしくお願いします」

お母様「初めまして。Wの母でございます。こちらが主人です。この度は娘が色々とお世話になり、ありがとうございました」

きらら「館長のきららでございます。こちらこそ、遠路遥々、足を運んで戴いて恐縮です」

予想に反して?何だか穏やかな雰囲気です。

お母様「娘が東京から帰って来まして、『お母さん、Aさんとのお見合い話は断ってください。わたしは今、お付き合いしているBさんと結婚したいと思っています』と突然、言い出しましてびっくり仰天。いえ、びっくりしたのはお見合い云々ではなく、今までは親の前では引っ込み思案で、自分の考えをはっきり言う娘ではなかったのに、わたしも主人も、生まれて初めて見る娘の真剣な顔に驚いたのです」

Wさん「そんなに真剣だった?(笑)」

お母様「いつもと眼の輝きが全然、違ったもの。ねえ、お父さん」

お父様はニコニコしながら頷いていらっしゃいます。
わたしはお母様の“独演会”に相槌を打つばかりです。

お母様「わたしたちも娘がお見合い相手との結婚に乗り気でないというのは薄々、気が付いていたのですが、ああもハッキリと自分の思いを親にぶつけてくれたことが、本当に嬉しかったのです」

Wさんもお父様も、そしてわたしも出る幕はありません。

お母様「そこで、よくよく娘に話を聞いてみると、『実は、東京できらら先生という方にお会いして~~』と“白状”。今までわたしたちが、『親はいつまでも生きていないのだから、自分の考えてることをハッキリと言いなさい』と、何度言っても聞かなかった娘を変えてくれた、それもたった一度、会っただけで変えてくれたのですから、何はともあれ、御礼にお伺いしなければと思って、主人と上京した次第なんです」

(ホッ!)

きらら「取り立てて特別なアドバイスをしたわけではないのですが、ご丁寧に恐縮です。Wさんはとても素直なお嬢さんですし、Bさんとは、お互いが足りないところを補え合えるカップルです。きっと幸せな家庭を築けると思います」

お母様「娘があんなに眼を輝かせて選んだ相手ですもの、わたしたちも大丈夫だと信じています。ねえ、お父さん!」

お父様「そうだね」

寡黙なお父様が初めて言葉を発しました。

お母様「ねえねえ、お父さん。わたしたちのことも占って貰おうかしら。もう手遅れかもしれないけど(笑)きらら先生に“ときめき貯金”の仕方を教えて貰いましょうよ」

まさしく喜色満面。――ご両親の笑顔を昨日のことのように思い出します。

昨年6月、WさんはBさんと結婚して、現在、妊娠5ヶ月とか。
是非とも、元気な赤ちゃんを産んで欲しいと願っています。 (了)

きらら(4/12)

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