『そんなに急がなくていい』
暦の上では、そろそろ暑さも落ち着いてくる頃だそうです。
……と言われても、外へ出ればまだまだ暑い(笑)。
昭和の頃なら、お盆を過ぎると夕方には少し涼しい風が吹いて、「夏も終わりだなぁ」なんて感じたものですが、最近の夏はなかなか帰ってくれません。
暦と現実が少々ズレてきたようです。
さて、夏休みも終盤です。
学生さんたちは、そろそろ宿題の残りが気になり始める頃でしょうか。
若い人を見ていると、時々思うことがあります。
今の若者は大変だなぁ、と。
スマホを開けば、同じ年頃の誰かが活躍しています。
20代で会社を作った人。
若くして大金を稼いでいる人。
海外で活躍している人。
SNSには楽しそうな人生が毎日流れてきます。
それを見ていると、
「自分は何をやっているんだろう」
と思ってしまうこともあるでしょう。
でも、これは少々困った話です。
昔は隣の家の息子が良い大学へ入ったくらいで済んでいた比較相手が、今では世界中に何万人もいるのですから(笑)。
そんな人たちと毎日自分を比べていたら、そりゃあ疲れます。
人生には早く花を咲かせる人もいれば、ずいぶん時間のかかる人もいます。
20歳で自分の道が決まる人もいれば、30歳でも迷っている人がいる。
40歳になって初めて天職に出会う人だっているでしょう。
どちらが正解ということではありません。
若い頃というのは、不思議なもので、時間が無限にあるように見えて、本人だけは「早く答えを出さなければ」と焦っています。
でも、50年、60年と生きてきた人間から見ると、
「そんなに急いで決めなくてもいいのになぁ」
と思うことがあります。
仕事を間違えたっていい。
恋愛に失敗したっていい。
遠回りしたっていい。
若いうちの失敗というのは、後になってみれば案外、失敗ではなかったりします。
あの時うまくいかなかったから、別の道へ行った。
そこで誰かに出会った。
そして人生が変わった。
そんな話はいくらでもあります。
人生というものは、一直線に目的地へ向かう電車ではないのでしょう。
道を間違えたり、途中で休んだり、引き返したりしながら進んでいくものです。
だから若い人には、あまり「正解」を急いでほしくないと思います。
今、自分が何者なのかわからなくてもいい。
何をしたいのかわからなくてもいい。
まだ途中なのですから。
処暑を迎えても、今年の暑さはまだ終わっていません。
それでも季節は少しずつ進んでいます。
人の人生も、案外そんなものなのかもしれません。
自分では何も変わっていないように思えても、昨日より今日、今日より明日へと、ちゃんと進んでいる。
若者よ、そんなに急がなくていい。
人生は思っているより長い。
そして人生は、思っているより何度でもやり直せます。
――若いということは、それだけでまだたくさんの「これから」を持っているということなのです。




