『忘れる力』

『忘れる力』

年齢を重ねると、「物忘れが増えた」と嘆く人が多くなります。
昨日の夕飯は思い出せないのに、何十年も前に言われた嫌な一言は鮮明に覚えている。
人間の記憶というのは、なかなか都合よくできていないものです。(笑)

先日、お客様との会話の中でこんなお話がありました。
「昔の失敗を、今でも思い出してしまうんです」
誰にでも経験があるのではないでしょうか。
夜、布団に入った瞬間に突然よみがえる失敗。
もう終わったことなのに、なぜか心だけが当時に引き戻されてしまう。

不思議なことに、人は成功より失敗を長く覚えています。
これは危険を避けるための本能とも言われていますが、その能力が行き過ぎると、自分自身を苦しめる原因にもなります。
占いの相談でも、「過去にこうだったから、きっとこれからも同じ結果になると思う」というお話をよく耳にします。

しかし、よく考えてみると、人生は過去の再放送ではありません。
十年前の自分と今の自分は違います。
経験も増えましたし、考え方も変わっています。
それなのに、昔の失敗だけは最新版として扱い続けてしまう。
まるで古い地図を頼りに現在地を探しているようなものです。

一方で、人間にはもう一つの素晴らしい能力があります。
それが「忘れる力」です。
忘れるというと、どこか悪いことのように聞こえますが、実は心を守るために欠かせない働きでもあります。
もし過去の悲しみや失敗を何一つ忘れられなかったら、人は前へ進むことができません。
桜が毎年咲くのも、木が去年の花びらに執着していないからかもしれません。
散るべきものは散り、新しい季節を迎える。

自然は案外、忘れることの大切さを教えてくれているようです。
過去を大切にすることと、過去に縛られることは違います。
思い出は持っていてもいい。

ただし、それを背負い続ける必要はありません。
最近少し疲れているなと感じる方は、一つくらい手放してみてもよいのではないでしょうか。
案外、運というものは、空いた場所に入ってくるものなのかもしれません。

きらら(5/24)

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