『銭湯の暖簾』

――やっと、秋らしくなりました。

「いやはや、いやはや、今さらながら自然の威力は恐ろしいもんだなあ。そんな自然にニンゲンは『自然に優しく』だなんて片腹痛いのう(笑)」

――さて、自民党総裁選も終盤、マスコミは相変わらず予想屋よろしく、ああでもない、こうでもないと能書きを垂れていますが、今月末には新しい総理大臣の誕生です。

「誰がなろうと大勢に影響はないのになあ。ワシはまだセリーグの優勝争いのほうがはるかに面白いと思うがのう(笑)」

――しかし、どの候補者も打って変わったように能弁で、立派なことを口にしています。

「銭湯の暖簾と同じで『ゆ』だけ。出来る、出来ないは関係なし。何を言っても勝手だし、そりゃあ美辞麗句を垂れ流すのは当り前だろう」

――でも、そういうのは”サルお芝居”というんじゃないですか。

「そうだよ。まさか君は頭脳明晰、人品骨柄卑しからざる人物が総理大臣になると思ってるのじゃないだろうな」

――ギョッ! しかし、いくら何でも一国の主を選ぶ選挙ですよ。そんな学級委員選挙レベルの選挙だなんて私には信じられません。

「どう思おうと勝手だが、権力者を選ぶ選挙だぞ。公明正大な手段で選ばれるはずがないだろう(笑)。前の総理大臣だって『一番、権力を持つ人間になりたかった』と子どもたちに言ってたじゃないか」

――繰り返しますが、候補者の全国遊説も人気投票のためのパフォーマンスというわけですね。

「そうだよ。それが何か?」

――じゃあ、彼らは澄ました顔の裏で何を画策しているんですか?

「ズバリ、総裁選後のポストだよ」

――ギョ、ギョッ!

「日本に限らず政治家が国家の為というのはテンプラもテンプラ。すべては我が身の保身と一族の栄華だよ。そのために彼らは何と言われようと世襲制に精を出すんだよ」

――なるほど。じゃあこの選挙は誰がトップの座を射止めるんですか?

「誰がなろうと我が国の行く末に大した影響なし。そんなことより海の向こうの領主様が誰になるかの方が問題だよ(笑)」

きらら(9/24)