「若者よ、今こそ使命感を抱け!」
百家鳴争の果てに緊急事態宣言が解除されました。
難敵のコロナウイルス相手だけに仕方がないのかもしれませんが、中途半端感は否めません。
今さらながらですが、マスク着用、三蜜回避に努めてください。
ホントに、ホントに久しぶりにW先生がひょっこり顔を見せてくれました。
W先生は某官立大学教授を定年で退官、現在は同大の名誉教授。
東洋史にかけては知る人ぞ知る大先生です。
「こんにちは。ご無沙汰です」
「わっ、W先生! お久しぶりです。足の方はもう大丈夫なのですか?」
昨年の秋、お風呂場で転んでしばらく入院。
退院後はリハビリに励んでいたと聞いていたのですが、突然のご来館にビックリ。
顔色はいいのですが、杖を突いています。
「今日は天気もいいし、やっと歩けるようになったので『きらら館』の移転直前の骨折でお祝いにも失敬してしまったし、入院中のお見舞いの御礼も兼ねて、アポも取らずお邪魔した次第だ」
「そんなことより、お元気で何よりです。――今、いつもの煎茶を淹れますね。次の予約までまだ時間がありますから、ごゆっくりしていってください」
「いや、孫を車で待たせているので、30分ほどで失礼するよ。――それに今日は、その孫の婚約者との結婚時期も観てもらおうと思ってな」
W先生の30分は、1時間を越えるのが普通。お気に入りのT屋の羊羹を添えます。
「それはさておき、昨今の日本は、政・官・財、すべての面で嘆かわしい時代になってしまったな」
「そうですね、コロナ禍による閉塞感のせいかもしれませんが、この頃、昭和の時代がとってもいい時代だったような気がしてなりません」
「コロナによって『新しい生活様式』なるものが頻りに叫ばれているが、その中身は何なのか。たとえばテレワークなど勤務形態は新しくなっているが、精神的には逆に後退、保守的になっているんじゃないかな。――この前、若い人の就職先の1番人気は『公務員』というデータが発表されていたが、正直なところガッカリしたなあ」
出ました天下国家論!――W節全開の気配です。
「無論、公務員だって立派な職業だが、給料・身分が安定していることで1番人気とは!――そのココロは、社会に対する『使命感』より国や県・市に依存する気持ち、もっと突き詰めれば『自分ファースト』、さらには『拝金主義』の表れとわたしは思うのだが…」
「昭和生まれの親御さんたちの影響ですかね?」
「時代が大きく変わろうという時に、日本の未来を背負って立つ若人が、新しい生活様式ならぬ『古い生活様式』に回帰するようでは、日本の将来は暗いと言わざるをえないな」
既に30分が経過、予想通り1時間コースになりそうです。 (以下次号)