「混乱の時代こそ、心を穏やかに」

9月も中旬というのに依然として日中は30度台。

春、夏、夏、冬……。

そのうち日本から「秋」は無くなるのでは?


およそ5ヶ月ぶり、移転以来初めて、敬愛する築地のお爺さまが顔を見せてくれました。

「元気でやってますか?」

いつもの飄々とした表情にホッとします。

「ホントにお久しぶりです。移転時には立派な蘭の鉢植えをいただきありがとうございました」

「早く来ようと思いながらコロナと暑さで、ついつい出不精になって…。今度の部屋は明るくてなかなかいいじゃないか!」

早速、いつものキリマンジャロを淹れます。

「ところで、今日は何の“講義”でしょうか?(ワクワク)」

「骨の髄まで昭和気質の爺さんの戯言が参考になるかどうか…www」

不易流行――コロナ禍で世の中の仕組みが大きく変わろうとしているだけに、終戦直後の混乱の時代を経験した方の言葉は貴重です。

「穏やかな時代は、ある程度、過去の経験が通用するものだが、現在のような価値観が大きく変わりつつある時代にあっては、どう対処すればいいのか迷ってしまうんだな。俺だって長い人生、紆余曲折があったが、そんな時こそ大切なのは心、心の持ち方だと、つくづく思うな」

「『時代』の大きな波にのまれ、自分のせいではなく、自分の力でどうしようもない問題に直面した時、誰しもオタオタしてしまいます」

「混乱した頭で考えた判断は大抵がペケだ。それは何とかしたいと思う気持ちが先行、独り善がりの考えに走ってしまうからで、結果的に、さらに深みにハマってしまうんだよ」

どうすればいいのか?

「まず、慌てず騒がず、目をつぶり深呼吸して頭を空っぽにするんだ。そうなれば自然に穏やかな気持ちで問題を客観的に分析できるし、そのうえで初めて過去の経験を加味して結論を出すべきだな。その順番を間違うと、さらに頭がこんがらがって、ますます迷子になってしまうぞ」

「意識して心を平らにして分析する…?」

「そういうことだ。抽象的な表現で、難しく感じるかもしれないが、案外とできるものだよ」

う~ん。お爺さまが、言わんとすることは分かるのですが…。
珈琲をお代わりします。

「繰り返しになるが、状況がどうあれ、とりわけ混乱時にこそ、自分軸をグラグラさせないことだ。すなわち自分を信じること、自分はどうしたいのか、という信念を堅持しなければ、単なるお題目で終わってしまうわな」

――――この後、これからの政治、経済に始まって、個人の生き方など身近な問題にまで話が移りました。 (以下次号)

きらら(9/14)