「雑学講座」
さくら満開の時期に発表された新しい元号は「令和」。
馴れないせいか、最初はちょっと違和感がありましたが、
何度も耳にすると何となく上品さが感じられる元号です。
その新元号発表の日、朝一番のお客さまはFさん。
今年で傘寿。
長らく経営していた会社をご子息に譲って、現在はご隠居の身。
とっても博識なお爺さまです。
若い時から好奇心旺盛。
仕事そっちのけで百科事典、漢和辞典などと首っ引き。
一昨年には自費でご本を出されたほどで自称・市井の雑学博士。
一番最初は、お孫さんの命名を占って欲しいとのことでお見えになったのですが、以後はご自身の引退時期以外、肝腎の占いはほとんどなし。
専らFさんの雑学講座を拝聴するのが、わたしの“役目”です。
「今日は化粧の話だよ」
今日の講義のテーマは、お化粧のようです。
「そもそも、化粧が始まったのは古墳時代、3世紀頃からなんだが、当時は男性も女性もしていたようなんだな」
「へ~っ。男の方もですか?」
「化粧の原料は、弁柄(べんがら)を焼いたものだから赤系統が多かったようだ」
「しかし、何のためにお化粧をしたのでしょうか?」
「魔除けというのが通説だ。赤は太陽の色だから、魔を祓う力があると考えたのだろう」
「ふ~ん、魔除けですか」
「その後、米や粟を原料にした白粉や、肌を滑らかにするために鳥や獣の脂を混ぜた、いわばファンデーションを作ったりしたみたいだな」
「しかし、米や粟は貴重な食料では?」
「だから、そんな化粧ができたのは、当初は身分の高い女性だけだ」
「口紅なんかは?」
「ずっと後だ。7世紀ごろかな、中国から鉛入りの口紅を遣隋使が持ち帰ってからだ」
「魔除けに始まって装飾道具。――普段当たり前のように使っている化粧品に、そんな“歴史”があったのですね」
「物事にはすべて歴史ありだ。IT時代だからこそ、歴史を知って現在を知ることが大切なことじゃないかな。以上、今日の講義はここまでだ」
講義の後はしばしの珈琲タイム。
またひとつお利口さんになったような気分ですwww