「老いらくの恋は美しき哉」
先日、何十年来のお友だちと踊り子号で静岡県・伊東市に。
泊ったのは山あいに立つ小さなホテル。
都会の喧騒を離れ静寂の中でゆったりと温泉に。
ひとときの休息でした。
今日の朝からのお客さまは、十年以上前、某ホテルに出演していた時に来て戴いたことのあるWさんです。
「ごぶさたです。この前、ネットを見ていたら偶然、きららさんを見つけて…」
「ありがとうございます。本当にお久しぶりです。Wさんもお変わりないようで何よりです」
「きららさんこそ…」
「いえいえ、もうおばあちゃんですよ。おかげさまで、この歳まで病気とは無縁なのが自慢ですが…」
珈琲の香りに包まれて、しばしの“昔話”。
「今日は母の相談なのですが…」
「お母さまって、ホテルに一緒にお見えになった…。もうお幾つになりました?」
「今年で88です」
「米寿、おめでたいじゃないですか」
「ボケるどころか、もう元気で、元気で。わたしより顔の艶もいいし、シャキシャキしてますよwww」
「いいじゃないですか。それで何か問題でも…」
「同い年のおじいちゃんと仲良くなって、週に一度は必ず“デート”だと言ってニコニコしながら出かけるんですよ」
「そうなの~www」
「デートはともかく、そのおじいちゃんが、超ヘビー・スモーカーで、それがうつったのか、母までがヘビー・スモーカーになってしまって…。もう家に帰ってもスパスパ。別に我が家は主人も喫うので禁煙主義じゃないのですが、母の健康にも悪いし、それにいい歳をしたおばあちゃんが銜えタバコなんて見苦しいじゃないですか。いい加減、止めて欲しいと思うのですが、何か禁煙させる名案はありませんか。今度、母を連れてきますから、きららさんからガツンと言ってくださいよ」
「米寿でおじいちゃんとデート、そして相手に倣ってヘビー・スモーカー。羨ましいぐらいに素敵な老後じゃないですか。残りの人生を自分の好きなように生きているって最高ですよ。そんなお母さまの生き方、わたしは大好きです」
「きららさんまで、そんなこと言って…www」
「禁煙がどうのこうのって、それこそ余計なお世話よwww。自分で“恋人”を見つけ、その恋人に合わせてタバコを嗜む。いじらしいじゃないですか」
「ふたりの相性はどうなのかしら?」
ようやく占いの出番です。
「最高。お似合いのカップルですよ」
「頑固で偏屈だった父の存命中は万事控えめだったのが、ようやく“理想の人”に巡り会ったことでルンルンなのかしら?」
「『老いらくの恋は美しき哉』――お母さまにとっては初めての“青春時代”なんだから、とやかく言うのは野暮というものよwww。親孝行のつもりで温かく見守ってあげてくださいwww」