「こどもファースト」
真夏のち梅雨、そしてまた真夏。
こんな時には十分な水分補給と休養を。
体調管理に留意してください。
暑いなか、古くからのお客様の紹介で遠路遥々、関西某県からAさんがお見えになりました
心を込めて淹れた珈琲をお出しします。
「東京は何年ぶりかしら。とっても人が多くて…」
しばしの四方山話。
風を入れたところで本題です。
「実は子どもの進路について。…ウチは代々医者の家系で、ふたりの息子のうち兄はすでに医大に通っているのですが、下の息子は『僕は、絶対に医者にはなりたくない』と言い張って…」
「お子さんはどんな方面を希望しているんですか?」
「マンガ家か、そうでなければイラストレーターになりたいと…。主人や父は、頭から医者になれ、医者以外認めないと頭から決めつけているのですが、わたしはあの子が充実した人生を送れるなら医者でなくてもいいと思っています。しかし、そうは思っても夫にも義父にも逆らえないし、家庭内で板挟み状態です。どうかわたしの心の支えになるアドバイスをお願いします」
生年月日をお伺いして、職業適性を鑑定します。
「息子さんには大きな『芸術★』が5つもあります。希望しているマンガ家、イラストレーターはピッタリ、天職と言ってもいいぐらい向いています。反対に『医療★』はひとつ、それも小さいの★しかありません。わたしは息子さんが進みたいと思っている方面に進むのがベストだと思います」
「その芸術★というのは、最高で何個ですか?」
「最高は5個ですが、今まできらら館にお見えになった方で5個も持っていたのはひとりだけでした。その方は現在、売れっ子のマンガ家として大活躍しています」
Aさん、心なしかホッとしたような表情です。
「『世の中は籠に乗る人 担ぐ人 そのまた草鞋を作る人』――人の世は、それぞれが自分の好きな分野、得意の分野で社会に貢献することで成り立っています。医者の家系に生まれたからといって、必ずしも医者になる必要はないと思います。わたしは常々、『子どもファースト』が一番と言ってきました。親が子どもの将来について、あれこれ指図するのは、かえって子どもの幸せを奪うのではないでしょうか」
「あのう、ついでと言っては何ですが、兄の方も観て戴けますか」
「お兄さんの方は、弟さんと真反対で、『医療★』が4つ。おそらくご主人やお爺さまの血を引いているのでしょう。将来は、きっと患者さんから信頼されるお医者さまになると思いますよ。ところでAさんは、美術系の学校のご出身ですか」
「はい。M美大です」
「道理で。弟さんは、AさんのDNAを受け継いでいるのでしょう。両親の良い所を兄弟が半分づつ受け継いで理想的ですよ。お帰りになったら、弟さんの応援団になって、ご主人とお爺さまを説得してください」
Aさん、にっこり笑って…
「分かりました。何だか勇気が湧いてきました。わたしの“分身”のために頑張ります」