『占い師の本懐』
まだ7月だというのに、暑さを通り越した熱い毎日。
加えて、1日1回のスコールにも似た大雨。
東京は既に亜熱帯気候になったのかも?
睡眠と水分をしっかり摂るように心がけてください。
今日は、わたしが駆け出しの頃からのお客様・A先生のご自宅に出張鑑定。
A先生は、いくつもの賞を取ったことのある知る人ぞ知る高名な女流作家。
先年、足を痛めたことで現在は養生を兼ねて伊豆半島にある別荘住まいです。
「きららさん、久しぶりに顔を見たいんだけど…」
何かとお世話になった先生から突然の電話。
「義理と人情」をモットーとする?わたしとすれば、出掛けないわけにはいきません。
日程を調整して、久しぶりの『踊り子号』。
キラキラ光る海を見ながら真夏のひとり旅も乙なものです。
「ご無沙汰してしまいました」
「遠いところをわがまま言ってごめんなさいね。急にきららさんに会いたくなって…」
「その後、足の具合はいかがですか?」
「毎日温泉で一生懸命リハビリをしているんだけど、もう年齢だからね。治りが遅くて…」
以前のA先生らしからぬ、ちょっと弱気な言葉。
「新しい作品をお書きになってるんですか?」
「う~ん。書きたいと思ってるんだけど、体調のせいか、なかなか筆が進まなくてねえ」
何とか元気づけようと思うのですが、文学にはトンチンカンのわたしには気の利いた言葉が出てきません。
「わたしのこれからの運勢を観てくれるかしら」
長いお付き合いですが、先生から正面切って鑑定を依頼されるのは久し振りです。
「特に健康面をお願いね」
わたしもプロの端くれ。
いくらA先生でも気休めを言うわけにはいきません。
四柱推命をはじめタロット、気学、星占い――念には念を入れて鑑定。
「今年の秋には足の具合は良くなります。バッチリですよ。但し、リハビリは手を抜かないでくださいよwww」
「嬉しいなあ。きららさんにそう言われると心強いわねwww」
「ついでに聞きたいけど、何歳まで現役でいられるかな?」
「傘寿までは衰え知らず。それ以上は先生の心がけ次第ですよwww」
「ホント?そこまで、きららさんに“保証”されたら急に元気が湧いてきたような気がしてきたわwww」
確かにさっきまでとは全然違う表情です。
「今日もまた、きららさんにパワーを貰ったわね」
まさに占い師の本懐。――わたしにとって一番、うれしい言葉です。