『別居の効用』

朝夕はさすがに冬。日中はポカポカ陽気。

寒暖の差が大きい毎日です。

風邪を引かないよう気をつけてください。

某月某日。
午後2時のお客様はKさんです。

胸にしっかり赤ちゃんを抱いたニコニコ顔のKさん。

「おかげさまで無事に産まれました。女の子です」

「わ~っ。かわいい。抱っこしてみて」

わたしに赤ちゃんを押し付けます。
何十年ぶりかに赤ちゃんを抱いた感触に緊張します。

「Nちゃん、きらら先生でちゅよ。初めましてのご挨拶は…」

「何はともあれ、おめでとう!――目鼻立ちもしっかりしてるし美人になるわよ、Nちゃんは!」

半年前の沈んだ表情とは別人のKさん。
すっかり幸せいっぱい、夢いっぱいのママの顔です。

「先生のアドバイス通り主人と離婚しなくて良かったです。本当にありがとうございました」

「あの時のKさんたら、大きくなりつつあるお腹を抱えて『主人には幻滅しました。もう離婚します、絶対に!』の一点張りだったんだから…(笑)」

「思い出しても恥ずかしい限りですが、あの時の主人は。身重のわたしを放ったらかしにして、ずっと他所の女の人のところへ行って家に帰って来なかったんですもの。もう何をするのも嫌になって、そんな時に友人の紹介できらら先生に出会って相談したのです」

過去のことをサラリといえること自体、すっかり吹っ切れた証しです。

「きらら先生は、毅然とした態度で『離婚はいつでもできます。短兵急に離婚するのは反対です。ご主人は根っからの浮気者ではありません。現在の浮気はたまたま巡ってきた浮気★のせいです。今は腹が立つでしょうが、何を言っても無駄だし、泥仕合になるのが関の山です。でも、あと3ヶ月もしたら、その★も消えますから、ご主人は頭を掻きながらあなたの元へ帰ってきます。もうしばらく待ってみてはどうですか』って仰ったんです」

それにしても、わたしが朧げにしか覚えていないのに、一言一句覚えているKさんの記憶力の良さに脱帽です。

「主人の顔を見るのも嫌な時だったので、正直なところ、先生のお話も半信半疑。最初は素直に聞けなかったのですが、『お母さんの気持ちが不安定ではお腹の赤ちゃんにも悪いから、しばらく実家に帰ってみてはどうかしら?”100日の別居”でも帰って来なかったら、その時こそ~』という言葉に、何だか救われたような気がして…」

Nちゃんはママの”独演会”にもかかわらず腕の中でぐっすり眠っています。

「”別居”してから90日目。もうすぐ予定日という時に、先生の言葉通り、主人が、本当にバツの悪そうな顔で実家まで来たのには、びっくりするやら、嬉しいやらで、心の中で笑ってしまいました(笑)あれ以来、主人は品行方正。Nちゃんのおむつは代えてくれるし、お風呂にも入れてくれる模範的なパパで、惚れ直しました」

会心の笑顔に幸せがあふれています。

「どうもごちそうさま(笑)」

きらら(2/6)