「負けたらアカン!」

皆さんにとって今年はどんな年でしたか。

思いは様々でしょうが、終わりよければすべてよし。

余すところ2週間。

除夜の鐘が鳴るまで気を抜かず信じた道を黙々と…。

先週、Hさんが半年ぶりに顔を見せくれました。

「お久しぶりです」

「あらあ、Hさん。お久しぶりです。お変わりありませんか?」

「元気に頑張っています。3ヶ月前に大阪に転勤になりましたが、出張の帰りに寄らせていただきました。きらら先生のおかげで今年も無事に1年を送ることができました」

Hさんが「きらら館」に見えたのは1年前の12月のことです。
そろそろ閉めようかなと思っていた時です。

「こんばんは。まだ大丈夫ですか?」

消え入りそうな弱々しい声でした。

寒い夜にわざわざ足を運んでくれたのですから無碍にはできません。

「はい。どうぞ」

「遅い時間なのにすみません」

新しい珈琲を淹れて勧めました。

「とっても美味しいですね」

「そうでしょ。何より心がこもっていますから…(笑)」

ぎこちない笑顔でしたが、少しは雰囲気が和らぎました。

新宿からの夜景

「実は、仕事が行き詰ってしまい、もう何もかもが嫌になって、自殺しようと決めて、この世の見納めに学生時代から遊びに来ていた渋谷に来たのですが、ふと目に入ったのが『きらら館』の看板でした。占いは初めてでしたが、何だか僕を呼んでいるような気がして…」

「自殺ですって!」

思いつめた表情は、冗談には見えません。
びっくり仰天です。

「ダメよ、自殺なんて! 人は皆、大きい小さいはともかく、この世に何らかの使命を持って生まれてきてるんですからね。その使命を果たさないうちに自分で死を選ぶなんて絶対にいけません。――あなたの生年月日は?」

ついつい声が大きくなります。
わたしの剣幕にHさんも驚いたようでポカンとしています。

「いいですか。仕事運は、先々月から今月にかけては八方ふさがりでドン底の20点です。萎える気持ちになるのも無理はありませんが、年が明けると一気に60点、再来月には70点と劇的に良くなります。今こそ、踏ん張り時期。ここで負けては男の子じゃないわよ!」

頷くものの、まだ気持ちは揺れているようです。
何としても思いとどまらせなければいけません。

「『きらら館』の看板に引き寄せられたのも何かの縁。年が明けたら、もう一度、顔を見せに来てくれるって約束してくれるかな」

「は、はい」   (以下次号)

きらら(12/19)