「告白された直後にお見合い話」

3045420721_e121ecb24aいつ頃からでしょうか?
最近は「親孝行」という言葉がほとんど聞かれなくなったような…。
「親を思う気持ちはあるのですが、なかなか~~」――厳しい世相を考えれば無理もありませんが、昭和生まれとしては、ちょっと寂しい気がします。

午後8時。
そろそろお終いにしようと思っているところへCさんが、ひょっこり顔を出しました。

Cさん「先生、こんばんは! まだ、大丈夫ですか?」

きらら「あらっ、こんなに遅くどうしたの? 予約は明日じゃなかった?」

Cさん「そうなんですが、明日は両親が急に上京してくることになったので…」

Cさんは上京して10年。
大学卒業後、現在は有名監査法人に勤める公認会計士さんです。

『きらら館』に初めてお見えになったのは2年前でした。
偶然、わたしと同じ信州ということですっかり意気投合。
以来、占いというより‟東京のおかあさん”という感じで、職場での嬉しいこと、辛いことなど諸々、近況報告を兼ねて2ヶ月に1度、顔を見せてくれる‟娘”のような存在です。

きらら「ご両親が揃って上京されるなんて初めてじゃない? お芝居でも観にいらっしゃるの?」

Cさんのお父様は税理士で、地元で大きな会計事務所を経営しています。

Cさん「‟スパイ役”の弟に聞いたら、両親が上京するのは、なんとお見合いの話を持ってくるらしいんです」

きらら「弟さんが‟スパイ”なの?(笑)」

Cさん「帰郷したときにお小遣いを上げてますから…(笑)」

きらら「お見合い話ねえ?――今年から来年にかけては結婚☆が廻っているから、タイミングとしては悪くないわよ」

Cさん「先生まで親の味方をしないでくださいよ。嫌なんです。わたしは、まだまだ東京に居たいし、現在の環境でやりたいことが一杯あるんですから…」

きらら「その方は信州の方なの?」

Cさん「弟によると、県庁にお勤めの方みたいです。両親は上京の目的も言わないので、どんな方なのか、はっきりは分かりません。しかし、どんな方であろうと、今のわたしは結婚などまったく考えていませんから、お断りするつもりです」

きらら「お父様は結婚を機に、あなたに帰郷してもらって会計事務所を継がせたいという気持ちもあるんじゃない?」

Cさん「そうだと思います。今までも何度か縁談の話がある度に、すべて釣書も見ないで断ってきたのですが、わざわざ上京するということは、相当に本気なのかもしれません」

子どもの幸せを願わない親はいません。
しかし、Cさんの頭の中に「結婚」の2文字は100%無さそうです。

となれば、久しぶりに「占い」の出番です。

Cさん「父も60代半ばですし、わたしに後を継がせたいと願う気持ちは理解できますし、それが親孝行だということも分かっています。でも、だからといって、東京でやりたいことを犠牲にしてまで帰りたいとは思いません、絶対に!」

いつもは育ちの良さを物語る穏やかな話し方をするCさんらしくありません。

きらら「お相手のことが分からないので、お見合い話については何とも言えないけど、ズバリ言っていいかしら。Cさん、好きな人が出来たんじゃないかしら?」

Cさん「えっ!」

図星だったようです。
Cさんの顔がポッと赤くなりました。

きらら「‟東京のお母さん”ですもの、それぐらい分かりますよ(笑)。この前は何も言わなかったから、その方とお付き合いを始めたのは最近?」

Cさん「はい。明日、先生に占ってもらおうと思っていたのですが…。大学の6年先輩で、担当会社は違うのですが、同じ監査法人に勤めています。今まで親しく話をすることはなかったのですが、1ヶ月ほど前、社内で飲み会があって、あれこれ話をするうちに…。まだ5回しかデートはしていないのですが、すごく優しいいい人なんです」

すっかり恋する乙女の表情です。

きらら「その方の生年月日は分かる?」

ふたりの相性は悪くはないのですが…。

きらら「その方、バツイチじゃないかしら…?」

Cさん「うわっ、どうして分かるんですか!――そうなんです。2年前に離婚したといっていました」

きらら「お子さんは?」

Cさん「男の子と女の子がいたのですが、男の子は別れた奥様の許へ、女の子は彼が引き取り、今は彼のご両親が育てているそうです」

きらら「彼からプロポーズがあったの?」

Cさん「はい。この前のデートの時に『結婚を前提に付き合って欲しい』と告白されました」

その矢先にご両親からのお見合い話。
Cさんが冷静さを欠くのも無理はありません      (以下次号)

 

きらら(12/21)

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