「Tさん、月下氷人になる!」

2867248779_586180fb49イギリス在住の華道家Aさんから今年もXmasカードが届きました。

Aさんとのお付き合いは、かれこれ30年。
わたしより10歳年上ですから既に70歳台。
5年前に単身で渡英、今では彼の地で100人近いお弟子さんに“日本の心”を教えています。
来春には帰国とのこと。
再会が楽しみです。

今日、一番最初のお客様は、そのAさんの一番弟子さんのTさんです。

いつものように背筋をピンと伸ばしたTさんの顔を合わすたびに『凛』という言葉が頭に浮かびます。

Tさん「久しくご無沙汰してしまいました」

きらら「こちらこそご無沙汰で。Tさんもお元気そうで何よりです」

珈琲を飲みながら、まずはお互いの近況報告から。
孫の自慢話に始まって健康問題、政治問題…等々。
そして昔を懐かしみながらの昭和回顧談で幕。
これがいつもの「ルーティン」です。

Tさん「今日の相談は、誠にお恥ずかしい話ですが、一番下の弟のことで…」

きらら「弟さんというと、数年前に奥様を亡くした弟さんですか?」

Tさん「その弟が先日、7回忌も終わったので再婚したいと言って来まして…。そのお相手の方は、わたしの教室のお弟子さんの妹さんなのですが、年齢が20歳以上も離れているということで、わたしの兄を筆頭に親戚一同が大反対なんです」

きらら「Tさんも反対なんですか?」

Tさん「弟夫婦には子供ができなかったので、きっと寂しいのでしょう。――小さい頃から『姉ちゃん、姉ちゃん』って一番なついていたし、母が亡くなった後も何かあると必ずわたしに相談する弟でしたからねえ。それにお弟子さんの妹さんだし、できれば一緒にさせてやりたいと思って只今、孤軍奮闘中(笑)。わたしが唯一の応援団という状況です」

きらら「それはそれは。――ところでTさんは、お相手の方にお会いしたことは?」

Tさん「2度だけですが、お会いしています。――彼女は介護士で、バツイチなんですが、今の時代には珍しい、とっても気立ての良い方なんですよ」

きらら「結婚するのは弟さんです。その弟さんが決意し、そのうえTさんのお眼鏡にかなった方なら、周囲が何と言おうと良縁だと思いますよ。――ちょっと観てみましょうか」

Tさん「是非、お願いします。きらら先生のお墨付きがあれば、わたしも勇気百倍です。兄だって、2番目の孫の名付け親のきらら先生が太鼓判を押せば、そう反対はできないでしょうから…(笑)」

おふたりの生年月日をお伺いして鑑定させて戴きました。

Tさん「先生、どうですか?」

Tさんの眼差しは、いつになく真剣です。

きらら「Tさんのお見立て通り、相性は◎!――彼女の性格は温厚実直。考え方は古風で、決して出しゃばらず、常に夫を立てる良妻賢母タイプ!――申し分ありません。Tさんとも合うし、今は反対しているお兄さんとも合うはずですよ」

Tさん「良かったわ。わたしが弟のために月下氷人になります!――きらら先生の鑑定には、きっと兄も折れるでしょう(笑)」

きらら「ただ、ふたりともお子さんとは縁遠い方ですから…」

Tさん「弟も年齢が年齢ですからね。――それより何より、ふたりが円満な家庭を築いてくれればいいのよ」

きらら「それと、彼女は健康そのもの。何の心配もありませんが、弟さんは生まれつき胃腸が弱くありません?」

Tさん「そうなんですよ。小さい時から…」

きらら「重大な病気ではありませんが、一度、病院で診てもらった方が良いと思います」

Tさん「はい。帰ったら、早速、病院に行くように伝えます。――今日は、何から何まで本当にありがとうございました」

きらら「いえいえ。――それより来年は、A先生が久しぶりに帰国されます。その時には弟さんたちもお呼びして、みんなで盛大にパーッとやりましょうよ」

Tさん「是非是非。もちろん弟の招待で…(笑)」

きらら(12/7)

 

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