「別れて正解、明日は明日の風が吹く」
みぞれ混じりの冷たい雨が降る夜のことです。
少し早目だけど、「そろそろ閉館にしようかな」と思案していたところへお客様がお見えになりました。
きらら「あらあら、どうしたの。ずぶ濡れじゃない。風邪ひくわよ。さあさ、タオルで髪を拭いて…」
思い詰めた顔で、何だか元気がありません。
きらら「珈琲飲む? それともお茶がいい?」
Rさん「あのう…お茶をお願いします」
ようやく口を開きました。
きらら「さあさ、元気を出して! 何を鑑定する?」
お茶を飲んで身体が温まったのか、表情に余裕が出て来ました。
Rさん「実は…ついさっき、1年半近く交際、結婚の約束をしていた彼に別れ話を切り出されて…目の前が真っ暗になって…宮下公園から、どこをどう歩いてきたのか分からないけど…ふと見たら、『きらら館』の看板が目に入って…わたし、これからどうすればいいんだろうと思って」
きらら「そうなんだ。でも、辛い気持ちは分かるけど駄目よ、雨の中を傘もささずに歩いちゃ。…まあ、これも何かのご縁。せっかく『きらら館』のドアを押してくれたんだもの、しっかりと心を癒して帰ってね」
Rさんと彼の生年月日をお伺いして、四柱推命で鑑定させて戴きました。
きらら「ごめんね。言葉を飾らずに言っていいかしら。別れて正解、大正解よ」
Rさん「エッ?」
きらら「あなたは本当に彼のことを好きだったの?」
Rさん「好き…だったと思います」
きらら「彼もあなたのことを真剣に愛していたのかしら?――彼は決して悪い人じゃないけど鑑定した限り、あなたとの相性は良くないどころか、はっきり言って『凶』。よく1年半もお付き合いしてきたと思います」
Rさん「……」
きらら「そんなに好きでもないのに、お互いが惰性というか、何となく付き合ってきたんじゃない?」
泣きじゃくりながら頷くRさん。
きらら「結婚の話は出てたの?」
Rさん「何度か聞いたのですが、『そのうち~』とか、『そうだね』ってとか、生返事ばかりで、はっきりした答は…」
きらら「彼も、あなたについては、嫌いじゃないけど、人生の伴侶とまでは思わない、いわば“漠然とした恋人”っていう感じで付き合ってきたと思うわ」
Rさん「彼は、『もう君とはこれ以上付き合えない』って言うだけで、はっきりした理由は言わなかったのですが、別れの原因は何だったのでしょうか?」
きらら「う~ん。彼は、ひとつ処に留まるのができない性格、つまり浮気性だから、多分、別の女性の許へ行ったと思うけど」
また涙です。(続く)
きらら(2/9)