「夫婦喧嘩も『握一点 開無窮』で円満解決!」


tastybit

今日から師走。 年々、季節感は失くなりつつあるとはいえ、やはり何かと慌ただしいものです。
終わり良ければ、すべて良し。――余すところ1ヶ月、健やかに毎日をお送り下さい。

北海道・秋田・福島・新潟・島根・広島・山口・大阪・和歌山・高知・愛媛・福岡・鹿児島・沖縄――今年1年、遠路遥々「きらら館」に足を運んで戴いた方々に、こんなお礼状を書いている時に、血相を変えたNさんが、挨拶もそこそこに飛びこんで来ました。

きらら「あらまあ、そんなに慌てて…?」

Nさん「主人と大喧嘩して家を飛び出して来たんです!」

きらら「まあまあ、落ち着いて。珈琲を淹れますから…」

Nさんは私と同い年。専業主婦ながら、子育てを終わった後に習い始めた日舞と三味線の腕前は今やプロはだし。凛とした立ち居振る舞いは、わたしの憧れの女性なのに、久し振りの今日はいつもとはまるで別人です。

Nさん「先生、聞いてください! 主人には堪忍袋の緒が切れました。離婚も辞さない気持ちです」

きらら「いつもは冷静沈着なNさんなのに、今日はどうしたのですか?」

Nさん「ここ半年ぐらい、主人の帰りが急に遅くなったので問い詰めたところ、『会社の同僚と飲んでいた』とか『接待だ』と、白々しい言い訳ばかりするので、つい『いい加減にしてください。そんなに家に帰るのが嫌なら、帰って来ないでいいです!』って言ったら、翌日から本当に帰って来なくなりました。会社には行ってるようですが、昨日でちょうど2週間、わたしは“未亡人”状態です。子供も独り立ちして、これからは夫婦ふたりで静かな生活を送れると思っていたのに、ひとりだけの食卓がこんなにも侘しいものとは…」

きらら「ご主人との相性はピッタリです。しかし、いくらピッタリでも100点満点夫婦なんてありません。晴れの日もあれば、雨の日、雪の日もあるのが人生です。そりゃあ、毎日が晴天なら苦労はありません。でも、悪天候の時にも、助け合い、労わり合うのが縁あって一緒になったのが夫婦じゃないですか。ご主人だって、会社で嫌なことがあったり、ストレスが溜まれば、飲みたいことだってあるはずよ。それを頭ごなしにガミガミ言うのは、Nさんらしくないと思いますよ」

Nさん「家に帰って来ないくせに、今朝なんか久し振りに電話がかかって来たと思ったら、『明日の晩は会社の先輩の通夜があるから一緒に参加するように』って…。腹が立ったので『わたしたちは“冠婚葬祭夫婦”なんですか! おひとりで行ってください』って言い返したら、『うるさい。黙って来い』って怒鳴ってガチャン。一体、どういう了見なのでしょうか?」

きらら「明晩のお通夜は仏さまのお導き。絶対に参加すべきです。ご主人だって、きっと気拙い、申し訳ないと思っているはず。“仲直り”するには良い機会です。たとえコンチクショウと思っても、ニッコリ笑って『仮面妻が参りましたよ』ぐらい言えば、ご主人も苦笑するしかないでしょうし、手を繋いで帰れば“もつれた糸”だってほぐれるんじゃないかしら。いつまでも嫌な思いを引きずっていると、お互いに疲れるし、何よりNさんのせっかくの気品も台無しになっちゃいますよ(笑)」

Nさんの表情が少し和らいで来ました。

きらら「Nさんたちは、『偕老同穴』の鑑のような御夫婦ですよ。この歳になって離婚するなんて、自分の仕事を持っていて、自立できる女性だけです。半年やそこらリズムが狂ったぐらいで、熟年離婚なんて考えること自体、Nさんにとっては暴挙という他ありません」

Nさん「そうかしらねえ」

きらら「それに2人の息子さんも独立、せっかく夫婦ふたりになったのですから、時間もたっぷりあるはず。ご主人の帰りを待つだけじゃなくて、たとえば水墨画とか、書道とか、日舞や三味線以外の何か打ち込める習い事でも始めたらどうかしら? Nさんならきっと上達も早いはずよ。それとも外へ出て、パートで働くのもいいと思うわ。お金云々じゃなくて、未経験の世界に飛び込めば、また新しい発見があるんじゃないかな」

Nさん「パートですか? 今まで経験したことないけれど、わたしでも大丈夫かしら?」

きらら「帰りが遅くなったのも、今までNさん自身が、ご主人に捉われすぎていたのが原因じゃないかしら。『握一点 開無窮』の精神で、相手の非を責める前に、まず自分が変わること。小さくてもいいからNさん自身が、生きがいや楽しみを見つけることで活き活きしてくれば、家の中も明るくなるし、そうなればご主人だって毎日、スキップしながら帰って来るはずよ(笑)」

Nさん「『握一点 開無窮』って、確かきらら先生の座右の銘だったわね。分かりました。明晩はお通夜に行って『冠婚葬祭妻が参りました』って言ってみるわ(笑)。その結果は、また報告に来ますね(笑)」

さっきまでの“般若”みたいな表情は何処へやら。いつものNさんに戻ってきました。

きらら「そうよ。わたしの鑑定ではNさん夫婦は“理想に近い夫婦”なのよ。わたしの占いを外さないようにお願いします(笑)」

きらら(12/1)