『トンネルを抜ければ…』

今年も余すところ3週間。

終わりよければすべてよし。

さあ、気合を入れて‥‥。

2017年某月某月。
開店早々、大きなマスクの女性が飛び込んできました。

「予約はしていないのですが、いいですか?」

「はい。大丈夫よ」

「ありがとうございます。下の看板の先生の写真を見ていたら、何だか相談に乗ってくれそうな気がして…」

お世辞にしてもうれしい言葉です。

「今、淹れたばかりだけど珈琲飲む?」

「えっ!――何度か占いには行きましたが、珈琲を出してくれるところは初めてです。いただきます」

ようやくマスクを外しました。
とっても可愛い顔です。
はて、以前どこかで会ったような‥‥。

「何を観ればいいかな?」

「仕事運をお願いします」

生年月日をお伺いして鑑定開始。

ほとんどノーメイクだったので気がつきませんでしたが、少し陰のある役で定評のある女優さんでは?

「良くても悪くても、めげませんからズバリ言ってくださいね」

「分かりました。――正直なところ、ここ1年の仕事運は、人生最大と言ってもいいくらいの陰の極でした。お仕事には恵まれなかったのでは?」

「本当にそうでした。わたし、女優をやっているんですが、どんな役でもヤル気はあるのに、全然、お仕事のオファーがなくて…」

「言いにくいけど、あと3~4ヶ月は、今のような状況が続くけど…」

「え~っ。まだ続くんですか?嫌だ~」

もう涙目です。

「でも、このトンネルを抜ければ、映画じゃなくて、舞台と思うけど、思いがけない役のオファーがあるはずよ」

「ホントですか?」

「あなた、ダンスは?」

「ええ、映画や舞台で演ったことはありませんが、半年位前から習っています」

「鑑定では、主演の恋人役のダンサーと出てるんだけど…」

「そうだと嬉しいなあ」

「あなたの場合、映画より舞台の方が向いていると思うけどなあ」

「舞台は、今まで2度しか出たことがないのですが、客席の反応がダイレクトだから、わたしもそんな気がしていました」

「辛抱するのも、もう少しだから、焦らず、腐らず!――頑張ってよ」

「はい!」

4ヶ月後、彼女が準主役を務める舞台の招待券がお手紙と一緒に送られてきました。
ただ、役柄はダンス学校の教師でしたが…。

きらら(12/11)

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