『覆水盆に返る』

今年は秋がないまま冬になりそうな…。

寒暖の差も極端です。

風邪を引かないように気をつけてください。

今日の予約のお客様はすべて終了。
雨も降ってきたし、予定より早く店じまいと思い、看板を引き上げに1階に降りて行ったところ、20歳代と思しき女性が後を追うようにエレベーターに。

「何階かしら?」

「すみません、8階です」

ひょっとしてお客様?

「きらら先生ですか?」

手に持った看板を見ながら、怪訝な表情でわたしを見つめます。

「はい。そうですけど…」

「友達の紹介できらら先生に観てもらいたくて茨城から来たんですけど、もうお終いですか?」

「大丈夫よ。雨の降る中、わざわざ遠いところから来てくれたんだもの…」

「良かった。よろしくお願いします」

「珈琲がいい?それとも紅茶?ルイボスティーもあるわよ」

「ルイボスティーがあるんですか?大好きです」

落ち着いたところで相談内容を聞きます。
「両親が離婚する、しないで揉めているんですが、わたしまで巻き込んで毎日のように大騒ぎ。ひとりっ子だから何とかわたしを“味方”にしようと必死になる気持ちは分かりますが(笑)、わたし的には煩わしいんです」

ご両親の生年月日をお聞きして鑑定を開始。

「大丈夫。別れませんよ、ご両親は。ちょっと派手な夫婦喧嘩ですよ」

「ふたりとも聞くに堪えない悪口の連発なんですが、それでも…」

「原因はお父さまの浮気でしょ」

「えっ!そんなことまで分かるんですか?」

「優しいし女性にモテるお父さまですね。お母さまはそんなお父さまを心底から愛していますよ。離婚はお母さまが言い出したと思うけど、要するにモテモテのお父さまに“大きいヤキモチ”を焼いているだけ。心配しなくても1週間も経たないうちに仲直りするわよ」

「そうなんですか?」

「ご両親の『きらら式相性度数』は91点。88点以上の夫婦は絶対に別れません。あなたは、ふたりの言い分を中立の立場で『はい、はい』って聞いていればいいわよ」

「良かった~。安心しました(笑)」

「男女の仲、それも相性のいい夫婦は、何度も何度も、お盆の水をこぼしながら、また元に戻して、弥次喜多道中よろしく人生を歩むものよ。あなたもそんな彼を人生の伴侶にしてくださいね(笑)」

「はい。彼が出来たら、先生に占って貰いに来ますから、その節は宜しくお願いします」

きらら(10/30)