『夫は船なり、妻は海なり』
『見いつけた 野川の土手に つくしん坊』
春。桜花満開。
新入社員でしょうか。
電車の中に真新しいスーツに身を包んだ若者の姿が目立ちます。
嬉しいこと、楽しいこと、辛いこと。色々あるのが人生行路。
頑張れ、フレッシュマン!
某月某日。
Wさんが予約時間通りにお見えになりました。
会社は息子さんに譲り、今は名ばかり会長で悠々自適の毎日。
今日もイタリアで買ったというおしゃれなマフラーを首に巻いています。
「こんにちは。あれっ、今日は奥様はご一緒じゃないんですか」
「正月早々、自宅で転んだ時に骨折、入院しちゃってね。今日もこれから病院に見舞いに行く予定なんだよ」
「容態はどうなんです」
「折ったのが手首だったので、たいしたことはないんだが、齢も齢だし、大事をとって入院させたところ、もう我がままで、我がままで、あれが食べたい、これを買って来いと、すっかり重病人気取りなんだから…www」
「奥様には、これまで散々、苦労をかけて来たのですから、こんな時だから”罪滅ぼし”をしてくださいwww」
「そうだよね。子どもたちも独立したし、家に帰っても待っているのは、婆さんが可愛がっているネコだけというのはわびしいもんだよ。毎日、文句タラタラの憎たらしい婆さんwwwでもいないと――つくづく有難味が分かったよ」
「確か来年か、再来年で金婚式のはずでは?」
「俺が26で、婆さんが22の時に一緒になったから、そうだね、来年で50年だ。あっという間だったが、ホント、会社らしい会社になるまでは、苦労の掛けっ放しだったからなあ。感謝しなきゃいけないな」
よほどご苦労を掛けたのか(?)、しみじみとした顔で昔を振り返っているようです。
「そういう気持ちになれただけでも怪我の功名。大事にしてあげてくださいね」
「そうそう、今日、お邪魔したのは、婆さんの言付けなんだが、『今年、気をつけなければいけないのは何月か、聞いてきて欲しい』って…」
「退院後のことでしょ。まあ、そんなことより、直すことの方が先決なのに、気が早いわねえwww」
「きららさんに『12月から1月にかけて気をつけるように』って言われていたのに、自分の不注意で怪我しちゃったことで、よほど入院が堪えたんでしょうwww」
「ちょっと待ってくださいね」
「退院してから自分で聞きに来ればいいのに、申し訳ありませんwww」
「今年と来年は全然、大丈夫。再来年の12月にちょっと曇りが見えますけど、たいしたことはないですよ」
「分かりました。ありがとうございました」
「そんなことより、人生を大海原にたとえれば、『夫は船、妻は海』です。いくら素晴らしい船でも、海がなければ単なる鉄の塊。海があっての船です。病院に行ったら、奥様に精一杯の感謝の言葉をかけてあげてくださいね」
「何だか、照れくさいなあwww」
「本当に感謝の気持ちがあれば、言えるはずですよwww。怪我だって気分が良くなれば早く治るんですから…www」
「夫は船で、妻は海ですね。分かりました。婆さんにしっかり伝えますwww」