「見切り千両。別れた彼は厄病神!」
ブルブルブル。寒いですね。
今年はインフルエンザが大流行とか。
油断は禁物。くれぐれもご自愛ください。
雨も降ってきたし、そろそろ閉館しようかなと、思っていたところに電話です。
「もしもし、今、東急百貨店本店前にいるのですが…」
消え入りそうな声が気になります。
すぐ近くです。
「はい、どうぞ。お待ちしています」
5分後。
とっても可愛い女性です。
傘がなかったのでしょうか、ずぶ濡れです。
「まあまあ、どうしたの。風邪引くわよ。このタオルで顔を拭いて。髪も乾かしなさい」
「ありがとうございます」
とは言うものの、目は虚ろ。顔にも生気がありません。
熱い珈琲を淹れて勧めます。
ようやく落ち着いたようです。
「ついさっきまで、彼と一緒にお食事していたのですが…」
涙声になりました。
「『他に好きな人が出来たので別れて欲しい』って…。突然だったので、何が何だか分からなくなって…。ふと、顔を上げると『きらら館』の看板が目に入ったので…」
泣き止むのを待って、彼女が口を開くのを待ちます。
「別れる運命だったのか、彼との相性を鑑てくださいますか」
ふたりの生年月日をお聞きして、鑑定開始。
こういう場合、気休めは禁物です。
「ズバリ、言うわよ。相性度数は41点。最悪よ。別れて正解、大正解。もし、あなたの方から別れを切り出していたら修羅場になっていたかも…」
「2年近くも付き合ってきたのに…」
「むしろ2年間も、お付き合いしてきたことの方が不思議なくらいよ。その間、いろいろ、たとえば金銭問題とかあったんじゃないかしら」
「はい。とにかく金銭にルーズで、おカネのことで何度も喧嘩しました。それでも好きなんだからと、自分に言い聞かせて、ずっと我慢してきました。貸して欲しいと言われたおカネもそのままですし…」
「そんなおカネは手切れ金のつもりでくれてやりなさいよ。返してもらおうと思ってズルズル付き合っていたら、もっと傷口が広がることになるわよ」
「(´;ω;`)」
「おカネは大切だけど、それ以上に大切なのは、これからのあなたの人生。いつまでも厄病神に関わらないで、あなたにふさわしい新しい出会いを待つべきだと思うわよ」
「(´;ω;`)」
「さあ、涙を拭いて。来年の6月以降に素敵な人が現れますから、それまでしっかり磨きをかけて…」
ぎこちないながらも、ようやくの笑顔です。
「もう一杯、珈琲飲む?」
「はい。頂きます」
「見切り千両」――時にして、人生に必要な言葉です。