「自分が変われば相手も変わる」
齢を重ねると、時間の経つのが早く感じられることを『ジャネの法則』というそうです。
これは、フランスの哲学者ポール・ジャネが発案したもので、彼は「人生のある時期における時間の心理的長さは、年齢に反比例する。すなわち、50歳の大人にとっての1年は50分の1に、5歳の子どもにとっては5分の1に相当する」と説明しています。
物理的に同じ時間でも、心理的には長くなったり、短くなったりする。つまり、気の持ち方ひとつで○にもなるし、□にもなるし、△にもなる。――人間の心というのは、実に不思議なものです。
さて、今日の最後のお客様はインターネットを見て電話をくれた北陸地方某県在住のFさんです。
新幹線の時間の都合で、予約時間は午後8時。
本来なら終業時間ですが、何か切羽詰まった相談のようで、しかも遥々、雪国から足を運んでくれるのですから、時間のことなど構っていられません。
定刻5分前。
Fさん「こんばんは。遅くなりました」
きらら「寒かったでしょう。さあさ、珈琲を飲んで寛いでください」
Fさん「東京はもっと暖かいと思っていたのですが、とっても寒いのにびっくりしました」
色白のせいか、少しやつれた表情に見えますが、電話の声よりは張りがあるようでひと安心です。
Fさん「東京ってさすがは大都会。とにかく人が多いうえ、夜になっても街全体が昼間みたいに明るいし、田舎生まれで田舎育ちのわたしにとっては、外国に来たような気がします」
きらら「今みたいに人は多くなかったけど、それでも初めて上京して来た時には、Fさんと同じように思ったわよ」
ひとわたりの世間話の後、本題に入りました。
Fさん「現在、結婚10年目。夫の実家で、夫の両親と子ども2人の6人家族で住んでいます。夫は公務員、わたしは専業主婦。義父は地元会社の役員で義母は毎日ではないのですが、手芸教室の先生をしています」
全然、訛りのないおっとりした話し方は、昭和の時代の雰囲気を感じます。
Fさん「世間から見れば、絵に描いたような幸せ家族なんですが…」
珈琲をひと息に飲んで言葉を繋ぎます。
Fさん「結婚当初から義母との折り合いが悪く、夫や義父がいる時は普通に接しているのですが、ふたりが勤めに出た後は、お互いに無視。途端に陰湿な”冷戦状態”になって、日によっては全然、口をきかないこともあるほどで、もう精神的に一杯一杯の情況なんです」
相当に深刻、ひと筋縄では行かないような気配です。
Fさん「優しいし、夫には何の不満もないし、何よりふたりの子どものことを考えて、今日まで我慢してきたのですが、先日、味噌汁のことで義母と大喧嘩。今日は、『お友達が入院したのでお見舞いに行く』と嘘をついて、家出する気持ちで上京してきました」
早速、お子さんを除く家族4人の生年月日をお伺いして鑑定させて戴きました。
きらら「Fさんとご主人の相性度数は92点。お父様とは88点。そしてお母様とは79点ですね」
Fさん「79点!やっぱり駄目なんだ」
きらら「77点というのは平均的な点数だし、お互いがほんの少しだけ努力すれば修復はすぐに可能な点数です。家出しなきゃいけないのは60点以下の場合だけですよ」
Fさん「そうなんですか」
若干、ホッとしたような表情です。
きらら「先程、結婚当初から折り合いが悪かったと仰っていましたが、何が原因なの? 鑑定では、ご主人とは熱烈な恋愛の末の結婚と出てるんだけど…」
Fさん「はい。主人とは、1年間の交際の末に結婚しました。心当たりといえば、丁度お付き合いしている時に、義母が手芸教室の生徒さんと結婚させようとしたのですが、主人が素気無く断ったのが尾を引いているのではないかと…」
きらら「それは考え過ぎだと思うわよ。お母さまは、ちょっと頑固で厳しいけど、根は優しいし、面倒見のよい方のはずよ」
Fさん「わたし以外には…。実家の両親なんか、わたしの気持ちも知らないで、帰る度に『良い所へお嫁に行って良かったわね』って言うんですから(苦笑)」
きらら「ご主人は長男?」
Fさん「そうです。妹がいるんですが、隣の県に嫁いでいます。わたしとも気が合うし…」
きらら「Fさんはお母さまとの性格は、とっても似てるのよ」
Fさん「えっ、そうなんですか?」
きらら「表に出すか、出さないかだけで、まるで親娘みたいにそっくりよ」
Fさん「うわ~っ! 親娘ですか!」 (次号に続く)
きらら(3/14)
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