「座右の銘は生涯現役」
『秋空をふたつに断てり椎大樹』(虚子)
久し振りの出張鑑定で訪れた甲州で秋を満喫。
美味しい葡萄に舌づつみを打って来ました。
さて、今日のお客様はBさん。
早世したご主人の後を継いで、社長として会社を切り盛り。
今や業界でも屈指の優良企業に育て上げた女傑です。
Bさん「すっかりご無沙汰してしまいました。色々と雑事に追われてなかなか時間が取れなくて…」
きらら「お元気そうでなによりです」
Bさん「わたしも今年で古希。老いを実感する毎日ですわ(笑)」
気のせいでしょうか、いつもと違って元気がありません。
きらら「何をおっしゃいます。Bさんには、まだまだ“働く女性の鑑”として頑張ってもらわなければ…。何しろ『1億総活躍時代』なんですからね(笑)」
Bさん「いえいえ、寄る年波には勝てません(笑)。あちこち身体も痛いし、そろそろ隠居しようと思ってるんです」
らしからぬ弱気です。
年初にお見えになった時は、「わたしの座右の銘は『生涯現役』」と言ってたのにどうしたのでしょう。
Bさん「実は、ふたりの息子もようやく一人前になったようだし、いつまでもわたしの下に置いておくのもどうかと思って、そろそろ社長の座をを返上しようかと…」
きらら「確かお兄ちゃんが専務で、弟さんが常務でしたよね」
Bさん「今までもきらら先生には、わたしが壁にぶつかる度にアドバイスして戴き、時には取りとめもない愚痴を聞いて貰ったのですが、今日は、ふたりのうちどちらに社長のポストを譲ったら良いか?…そのご相談に伺いました」
引退の決意は固いようですが…。
きらら「引退されることは、もうおふたりにはお話しになったのですか?」
Bさん「まだ発表していません。来週の役員会で話そうと思っています」
Bさんとご子息ふたりの運勢を改めて鑑定させて戴きました。
う~ん。3人の運勢から観て、ちょっとタイミングに問題ありです。
きらら「長年の誼でズバリ言いますよ。隠居するのは、時期早尚です。もうちょっとだけ延ばした方がベストだと思います」
Bさん「もう少しというと…?」
きらら「そうね、少なくとも1年。――ご兄弟ふたりの性格は、よく似ているし、どちらもAさんの後継としては申し分ないのですが、もし今年だと、どちらが社長になっても反発し合って、ヘタをすると会社を揺るがす兄弟喧嘩になりかねません。1年、出来ればあと2年はBさんが陣頭指揮を執った方が良いと思いますよ」
Bさん「2年ですか?」
きらら「Bさんのこれからの2年は、有終の美を飾る年です。それ以上お続けになると、経営上も、また健康にも支障が出る虞があります。『惜しまれつつ引退する』――それがBさんらしい最善の策だと思いますよ」
Bさん「それで、社長にはどちらが適任ですか?」
きらら「座りがいいのはお兄ちゃんですが、おふたりとも社員からの信頼も厚いし、どちらでも問題はありません。それはご兄弟が話し合って決めればいいと思います。弟さんの性格では、多分、お兄ちゃんに譲るはずです」
Bさん「正直なところ、現段階でどちらに譲るにしても、一抹の不安を抱いていたのですが、有終の美を飾るために、きらら先生の今のアドバイスで2年間頑張ってみます」
それでこそBさん。その意気ですよ!
きらら(10/12)
photo credit: Atago Grape Farm (Kofu, Yamanashi, Japan) via photopin (license)