「Hちゃん、13歳の疑問」
2015年8月盛夏
きらら館・スタッフ一同
夏休みです。――渋谷の街は、いつも以上に若い人たちで溢れています。
「こんにちは」
入口で可愛い声がします。
きらら「はい、どうぞ~」
小学校高学年か、中学生と思しきかわいいお嬢さんです。
いくら渋谷が若者の街にしろ、ちょっと若過ぎます。
きらら「どうしたの? 一人で来たの?」
「ううん、お母さんと一緒です。わたしは階段を昇ってきたので早く着きました。お母さんは今、エレベーターで上がって来ています」
お母様が到着しました。
Wさん「すみません。Wと申します。渋谷まで買い物に来たものですから、突然お邪魔しましたが、大丈夫ですか?」
きらら「初めてですよね。誰かのご紹介ですか?」
Wさん「母の紹介です」
聞けば、お嬢さんがどうしても知りたいことがあるらしいのですが、主人や学校の先生に聞いても生返事ばかりでハッキリしないし、母に尋ねたら、「困ったわね。じゃあ、きらら先生のところへ行って聞いてみたら?」ということでお見えになったとのこと。
きらら「ひょっとしてお母様って、10年位前になるでしょうか、お孫さんのお名前を鑑定して欲しいってお見えになって以来、年に何回か、来て戴いていたKさんですか?」
Wさん「はい。その節は母がお世話になりました」
きらら「あらまあ、そうでしたか。これはこれは失礼致しました。――ところで、昨年以来、お見えにならないので気になっていたのですが、Kさんは変わらずお元気ですか?」
Wさん「一昨年末にバスの中で転んで大腿骨を骨折、しばらく入院して以来、ちょっと歩くのが不自由になって…。でも、それ以外はまだまだ元気です。きらら先生に『よろしく』って申しておりました」
きらら「こちらこそ、よろしくお伝えくださいね」
Wさん「きらら先生に名前を付けて戴いたのは、この娘の妹で、今年で10歳。お蔭様で病気もせず、元気に小学校に通っています」
きらら「そうですか。アッ、思い出しました。確かAちゃん…だったかな?」
Wさん「そうです。お姉ちゃんと違って、もうヤンチャでヤンチャで、今は『なでしこジャパンに入るんだ』ってサッカーに夢中です(笑)」
よもやま話に花が咲き過ぎました。
きらら「ところで、今日のご相談というのは…?」
Wさん「Hちゃん、自分で聞いてごらんなさい」
Kちゃん「あのね。お母さんは、いつもわたしの顔を見ると『勉強しなさい。勉強しないと、良い学校に行けないわよ』っていつも言うんだけど、この頃、勉強する事の意味というか、勉強して良い学校に行くことが、そんなに大切なのか?――よく分からないのです。勉強は嫌いじゃないし、成績も悪くありませんが、分からないまま勉強ばっかりするのが、何となく虚しいというか…。世の中には、別に良い学校に行かなくても立派な人はいるし、良い学校を出ても、つまらない人生を送っている人もいるし、なかには悪いことをしている人もいます。なのに、どうしてみんなが、勉強、勉強ってうるさく言うのか?――教えてください」
「勉強の出来、不出来と社会に出てからの成功、不成功の関係」――わたし自身の子ども時代には想像すらしなかった質問です。
きらら「Hちゃんは何歳?」
Hちゃん「13歳です」
きらら「中学1年生で、そこまで考えるなんて、すごいわね~!」
相手は次代を担う子どもです。
ヘタな回答はできません。
『亀の甲より年の功』を発揮しなければなりません。
Wさん「すみません。占いに関係のない相談で…」
きらら「いえいえ。年齢を問わず背中を押すのがわたしの役目。誠心誠意お答えしたいと思います」
Hちゃんは神妙な表情です。
きらら「まず、Hちゃんは勉強することは楽しいし、何となくではあっても大切なことと思ってるのよね!」
Hちゃん「はい。今まで出来なかった問題がパッと解けたり、知らなかったことが分かった時には『やったあ!』って飛びあがりたくなります」
きらら「その気持ちというか“快感”こそが、勉強にはとっても大切なの。これからも、その気持ちを忘れずに頑張ってね。――ところで、世の中に出てからの成功、不成功についてだけど、確かにHちゃんの言うように、学校の成績が良く、優秀な学校へ行くことだけが、成功の絶対条件とは言えません」
Hちゃん「なのに、どうしてお母さんたちは、勉強さえ出来れば、社会に出てもすべてが上手く行くようなことを言うの?」
きらら「学校での勉強は、いわば世の中で必要な知恵を獲得するための“基礎知識”というか、そうねえ、ジグゾーパズルに例えれば、ひとつひとつのピースみたいなものと言えば分かるかな?」
Hちゃん「ジグゾーパズルは大好きです。妹ともよくやります」
きらら「ピースが多ければ多いほど、難しいけど、出来あがった時は大きい素晴らしい絵になるでしょ。国語というピース、数学というピース、英語というピース……色々なピースを組み合わせて、自分に合った“絵”を仕上げるのが人生なのよ」
Hちゃん「そっかあ。じゃあ、学校でやってる勉強は将来、大きなジグゾーパズルを完成させるための“ピース集め”ということですね」
Hちゃんの目が輝き始めました。
きらら「でも、たくさんのピースを集めたあと、そのピースをどんな風に組み合わせたらより素晴らしいジグゾーパズルが完成するか? それが……」 (以下、続く)
きらら(8/2)