「子孫に美田を残さず」(続)
練馬・千川通りのさくらは満開です。
♪♪さくら さくら やよいの空は 見わたす限り
かすみか雲か 匂いぞ出ずる
いざや いざや 見に行かん♪♪
嬉しい気持ちを倍増、沈んだ気持ちを明るく――数ある花のなかでも「さくら」の存在感は格別です。
前置きはさておき、前回の続きです。
きらら「日本に来てる留学生は多いのですが、勉強を終えたら必ず母国に帰って国のリーダーになることが条件だなんて、会長らしいお考えですね」
Aさん「国の発展には資金も大事だけど、一番は人材だからね。我が社がそこそこ大きくなれたのも、一にも二にも優秀な人材のお蔭だからね。学生時代は見事な“落ちこぼれ組”だったし、わたしの力なんて大したことないのは、自慢じゃないけど自覚してるし、そんなわたしの指示に忠実に従ってくれた社員たちは、まさに宝物だよ」
きらら「口で言うのは簡単ですが、なかなか出来ないことですよ。以前、鑑定させて戴いた息子さんは、やはり会長の会社にいらっしゃるのですか?」
Aさん「いいや。近畿地方の大学で教鞭を執ってるし、もうひとりの娘は、大学在学中に結婚、今はアメリカに住んでるよ」
きらら「じゃあ、お二人とも会社とは無関係?」
Aさん「息子は、きららさんに鑑てもらった時、『この方は、実業家には向きません。学者、研究者の道に進まれると大成します』ってピシャっと言われたし(笑)、彼らの希望する通りの道を選ばせたよ」
きらら「あらら? あの時は確か『友人の息子だけど…』ということで鑑定させて戴きましたが、会長のご長男だったんですか?(笑)」
Aさん「そうだよ。しかし、あのご託宣は図星だったし、わたしも息子も、きららさんには大感謝してるんだよ。特に息子なんかは、『親父が好きな道に進まむことを許してくれたのは、きらら先生のお蔭だ』って、いつも言ってるよ(笑)」
きらら「そういえば、お正月明けに、会長と同じ苗字で、大学で教えているとおっしゃる方がお見えになりましたが、あの方が会長の息子さんだったのですね。思い返せば、何となく会長の雰囲気と似ていたような気がしますが、そんなことはひと言もおっしゃらず…。そう言えば、初めてのお客様なのに、高価なクッキーを『お土産です』って戴いて、不思議な気がしていたのですが…(笑)」
Aさん「きっと照れくさかったんでしょう(笑)」
きらら「確か、あの時は『娘の結婚運を鑑て欲しい』というご依頼だったと思うのですが、今回の結婚式は、その方の?」
Aさん「息子いわく『相手は三国一の花婿だ』って言ってたけど、ひょっとして、あれはきららさんの受け売りだったのかも…?(笑)」
きらら「お役に立てて光栄です(笑)」
Aさん「でも、あの時、きららさんがズバリと言ってくれなかったら、本人の適性も考えず、親子の情で、息子を我が社に入れていただろなあ(笑)。子孫に美田を残すことの“無謀さ”を教えてくれたのもきららさんだし、そのうえ、今度は孫娘までがお世話になって、まさに『合縁奇縁』――改めて“我が家の相談役”に心底より御礼申し上げまする~(笑)」
きらら(3/30)
photo credit: 大宮公園の桜 2014 via photopin (license)