「お・も・て・な・し」

桜のイメージ最近、年甲斐もなく「十七文字」にハマっています。
初心者も初心者、まだまだ下手の横好きのレベルですが、恥を省みず詠んだのが次の一句です。

『水温み 桜の便り すぐ其処に』(きらら)

わたしに俳句の手ほどきをしてくれたのは、某温泉旅館の若女将Cさんです。

Cさんと出会ったきっかけは、お客様としての来館でした。
聞けば、『きらら館』のインターネットを見て、わざわざ北関東某県から新幹線で足を運んでくれたとの由。

相談内容は、「姑さんにあたる女将との折り合いの悪さを何とかしたい」というものでした。

Cさん「わたし自身、まだまだ到らないところがあるのは判っているのですが、女将にあれこれ注意されると素直になれなくて、心の中では我慢しなきゃいけないと思いつつ、ついつい反発してしまうのです。お客様の前では笑顔を見せていますが、今のままでは、せっかく来て戴いた方々に微妙に不快な思いをさせているのではないか?と思うと、将来は女将として頑張らなきゃいけないのに、そんな気持ちも萎えそうになります。今後、女将と上手くやっていくにはどうすればいいのでしょうか? もし、どうしても合わないのなら、夫とふたりで旅館を出るか、それも不可能なら離婚も考えています」

きらら「核家族が増えた現在、昔ほどではないにしろ、嫁姑の確執は世間にはよくあることです。でもね、それも様々で、自分がお腹を痛めて産んだ息子を嫁に奪われたとばかりに“いじめ”丸出しの小言をいう鬼姑もいれば、次代を任せる息子の嫁としてしっかりして欲しいと願って“忠告”する人生のアドバイザーみたいな姑まで色々よ。それを十把ひとからげにして“嫁姑戦争”などと、おもしろおかしく囃し立てる方が間違っていると思います。離婚だなんて、性急に結論を出す前に、そもそも何が原因なのか、その原因は取り除けないものなのか、じっくり考えてみましょう」

早速、姑である女将と舅、それにCさん夫婦の生年月日をお伺いして鑑定させて戴きました。

Cさん「夫とは円満そのもの、何の問題もありません。それより、わたしと女将の相性はどうですか? 離婚してやり直した方がいいですか?」

Cさんから矢継ぎ早の質問が飛んで来ます。

きらら「まず、女将とCさんの関係ですが、10段階で言えば8.5。ふたりの相性はとっても良いですよ。それなのにしっくりしない原因は、Cさん、あなたの方にあるんじゃないかしら?」

Cさん「エッ、わたしに?」

きらら「意地悪な姑なんてとんでもない。女性として、女将として、わたしも見習いたいと思うぐらいお義母様は素晴らしい方です。それをCさんが、誤解しているんじゃないかしら?」

Cさん「誤解?」

きらら「ズバリ言うけど、Cさんは、良くも悪くも我が道を往くタイプで、自分が良いと思ったら、相手も同じ様に良いと思ってくれていると、早合点してしまうところがあるんじゃないかな?」

Cさん「そういう所はあると思います」

きらら「あなたも言ってたように、女将は将来の女将として、自分にないものを持っているCさんに期待しすぎるほど期待しています」

Cさん「それは分かりますし、わたしも期待に応えるつもりで、初めての土地に嫁いで来ました」

きらら「釈迦に説法だけど、旅館業というのは、究極の“お・も・て・な・し”が要求されるビジネスよね。女将は、これまでに培った“おもてなし術”を伝えようとしているんだけど、それを素直じゃないあなたは、小言と受け取っているんじゃない?」

Cさん「じゃあ、どうすれば良いんですか?」

きらら「女将の言葉に対して、何故、女将はあんなことを言ったのだろう、わたしが女将の立場にあったらどう言っただろうって、カチン!と来る前に深呼吸。一拍置いて冷静に考えてみたらどうかしら?」

Cさん「女将には、いつも『相手の立場を考えて行動しなさい』って言われています」

先程まで思い詰めていたCさんの表情が少し柔らかくなってきました。 (続く)

きらら(3/9)