「信には信で、誠には誠で」

浮気電話で予約のあったEさんが、開館と同時にお見えになりました。
見るからに真面目なサラリーマンといった感じですが、緊張しているのか、椅子に座ってもモジモジするばかりで、なかなか言葉が出てきません。

きらら「そんなに緊張しないでくださいね。 珈琲でもお淹れしましょうか?」

Eさん「ハ、ハイ」

珈琲を飲んで少しは落ち着いたのか、ポツリポツリ話を始めました。

Eさん「実は、誠にお恥ずかしい話ですが、結婚以来15年。初めての浮気が妻にバレてしまい、それ以来ずっと口をきいてくれず、中学生の娘からも白い眼で見られ、家庭内で孤立しています」

(しばし沈黙)

Eさん「食事と洗濯だけはやってくれますが、食卓でも無言で、毎日が針のムシロ。“家庭内無人島暮らし”状態です」

(再び沈黙)

Eさん「いつまでこんな“地獄”が続くのか。ひょっとして妻が家を出て行くのではないか、離婚を言い出されるのではないか。そう思うと仕事にも力が入らず、体重もここ1ヶ月で5キロほど減ってしまいました」

(またまた沈黙)

Eさん「妻と仲直りするには、どうしたらいいのか。誰にも相談できず、藁をもすがる思いで、何か所か占いに行ってみましたが、満足な回答は得られませんでした。そこで、ネットで探した『きらら館』が最後と決めて、お邪魔した次第です。どうかよろしくお願いします」

やっとここまで話したEさんの額には大粒の汗。相当に深刻です。

きらら「分かりました。 それではEさんと奥様、娘さんの生年月日を教えてください」

四柱推命とタロットで占いました。

きらら「う~ん、奥様との相性は何ら問題はありませんし、それに娘さんとも悪くないどころか良好ですよ」

Eさん、少しホッとしたような表情を浮かべました。

きらら「ところで、浮気の相手は奥様の知り合いの方ですか?」

Eさん「いいえ。会社の取引先の…」

きらら「奥様は、何事にも一途な性格で、是は是、非は非。良くいえば潔癖症の塊のようにキチンとしている、悪くいえば頑固で柔軟性がない方です。それだけに、たった1度でも、心底から信じていたあなたに裏切られた口惜しさで、憎さ百倍、怒り二百倍になっているのでしょう。もし浮気の相手が奥様のお知り合いの方だったら、たとえ相性は良くても、とっくに修復不能な修羅場に突入していたと思います」

Eさん「フ~ッ!…先生、相性が良くても結婚生活は不調ということもあるんですか?」

きらら「よく聞かれることですが、『結婚したいと思う気持ち』には相性の良さが大切です。いわば必要条件ですね。しかし、結婚生活は『現実』です。現実を乗り切るには十分条件も必要です」

Eさん「僕の場合、十分条件って何でしょうか?」

きらら「もちろん、それは各人各様ですが、Eさんの場合は、奥様に対する日常の心配り、気配りが欠けていたのでは?と思います。いちいち言わなくても、あるいは態度に表わさなくても奥様は分かってくれているだろうという甘え、もっと厳しく言えば、“手抜き”があったのではないでしょうか?」

Eさん「そうだったかも知れません」

きらら「奥様にしてみれば、そうした手抜きも、Eさんに対する100%の信頼があったからこそ意に介さなかったのだと思います。それが1度にせよ、Eさんが浮気したことで根底から崩れてしまい、今日の事態を招いているのです。つまり奥様にとっては、1回の浮気も100回の浮気も同じ受け止め方なのです」

Eさん「それで、今後どうすれば…」

きらら「奥さまはそういう性格の方だということを認識したうえで、ここはもう一度、お二人でよく話し合ってみたら如何でしょうか。奥様も内心では、離婚などは考えていません。――『信には信で、誠には誠で応えるべし』――今までのEさんと、『きらら館』にお越し戴いた後のEさんとでは、同じ反省の言葉を口にしたとしても“重さ”は全然違うと思います。自信を持って話し合いに臨んでください」

Eさん「分かりました。何となく勇気が湧いてきたような気がします」

沈んでいたEさんの顔に少し薄日が射して来ました。
もう大丈夫です。
Eさん、頑張って…!

きらら(12/15)