『者』と『師』の違い

physician先日、私が「人生の師」のひとりと仰いできたK先生の3回忌に参列させて戴きました。

K先生との出会いは、私がまだデパートに出ていた頃ですから、もう10年以上も前のことです。
背が高く、白髪で、ビシッと着こなしたスーツ――どこから見ても“素敵なジェントルマン”でした。

ふらりと私の前に座り、渋い声で「占って欲しいんだけど、いいかな?」

K先生の雰囲気に圧倒された私は、「は、はい」と、どぎまぎしながら答えるのが精一杯でした。

K先生は10枚ほどの履歴書を机の上に置き、「これが私の生年月日だ実は来月、私の病院の採用試験の面接をするのだが、人柄を基準に、私と波長が合いそうな人物を2人選んで欲しいと思ってね。明日また来るから、よろしくね」とだけ言い残してお帰りになりました。

後になって分かったことですが、K先生は名の知れた大病院の院長先生だったのです。

言われた通り、ひとりひとりを一生懸命に鑑定。翌日、お見えになったK先生に鑑定結果を報告しました。

きらら「皆さん、お医者さんだったんですね。――この方とこの方が、Kさんとはピッタリの相性です。特にこちらの方は、先生がツーと言えばカーと返ってくるほどの良い相性ですよ。他の方も錚々たる大学を出てらっしゃるし遜色ないのでしょうが、人柄を中心に観た場合は、断然この2人です」

K先生「そうか。実は、僕もこのふたりは是非、採用したいと思っていたのだが、なるほど図星だね。失礼な言い方だが、今まで占いってあんまり信じていなかったんだが、認識を新たにさせられたよ。失敬、失敬。これからもチョクチョク寄らせて貰うよ」

きらら「いえ、いえ。こちらこそよろしくお願いします。でも、K先生はどうして採用の基準を人柄に置くのですか?」

K先生「『医者と医師は違う』というのが僕の持論でね。私が求めているのは『医師』なんだ。では『~者』と『~師』はどう違うのか?――病気だけを治すのが『医者』。これに対して『医師』というのは病気も治すが、患者の心も治す、つまり診察に満足して貰う、納得して貰うのというのが、僕の考えなんだ」

きらら「納得です」

K先生「知り合って、まだ2度しか会ってないきららさんにこんなことを言うのは余計なことかもしれないが、きらら先生にも単に占うだけの『占者』ではなく、悩んでいる人の心を癒す、迷っている人の背中を押す『鑑定師』になって欲しいと思うな」

まさに私にとっては眼からウロコの珠玉の言葉!――K先生のこの言葉は今も、私の「鑑定師」としてのバックボーンになっています。

きらら(12/9)