「生涯現役」

飛行機初めてお会いしてから20年。
年に一度、必ずご自身の誕生日に訪ねて来てくれる“スーパーお婆ちゃん”(と私が勝手に呼んでいる)N会長が、先日もまた顔を見せてくれました。

御年88歳。
今なお現役、息子さんが社長を務める貿易会社の会長です。
常に背筋をピンと伸ばしてシャキシャキと歩く姿は、漢字一文字で表わせば、まさに「凛」。
とても米寿を迎えたお婆ちゃんには見えません。

40歳代で旦那さんを亡くし、以後その意志を継いで社長職に。
子育てをしながら奮闘すること20余年。
70歳で2人の息子さんを社長と専務に据えて、ご自身は会長として現在も陣頭指揮を執っている“ウルトラスーパー・オールドウーマン”です。

最初の頃は、会社の経営方針や人事についての鑑定依頼が多かったのですが、会長に就任後の、私の役目は、もっぱら早くして逝った旦那さんとの思い出話や社長時代の苦労談、お孫さんの自慢話の聞き役でした。

先日も、某大学の大学院に在籍中のお孫さんの自慢話から始まり、最後は亡くなってから40年以上になる旦那さんと一緒に、海外を飛び回っていた創業当時の思い出話など、いつものようにN会長の独演会ペースで話が弾みました。

きらら「ところで、社長もお変わりありませんか?」

N会長「バリバリ頑張ってるわよ。そういえば、当時、専務だった長男を『社長に昇格させるのはいつが良いか?』って相談した時、『いつまでもしがみついていないで70歳で譲ることをお奨めします』って、きっぱりと言ってくれたのだけど、きららさんは覚えてるかしら?」

きらら「出会ってから間もなくの頃でしたよね」

N会長「正直なところ、息子はまだまだ甘いし、私は迷っていたんだけど、あまりにもきららさんがハッキリと口にするので、『よしっ、きららさんの鑑定に賭けてみよう』と決断。70歳になったのを機に社長の座を降りたんだけど、これが大正解。取引先も増えてトントン拍子。専門商社としての形も出来たし、現在の売上高は私が社長だった頃の20倍近くになってるのよ。あの時、きららさんのアドバイスの言う通りにしなかったら、未だに年甲斐もなくフーフー言ってるかもね(笑)。ホントに感謝、感謝。我が社にとって、きららさんは“大明神”よ。社内に神棚でも作らないとバチが当たるわよね(笑)」

きらら「いえいえ、私は背中を押しただけです。きっと亡くなった旦那さんが見守ってくれているからですよ」

N会長「来年もまた来るからね」

きらら「会長もお身体に気をつけて…」

生涯現役。まさしく職業婦人の鑑です。

きらら(10/28)