「師匠・一六先生のこと」

Entranceお盆になると必ず思い出す人がいます。
私に「占い」を手ほどきしてくれた大竹一六先生です。

変わったお名前について、先生は「兄弟姉妹、十六番目の末っ子ということで、親も面倒くさくなって“背番号”替りにつけたようだ」と笑っていましたが、古武士を思わせる立ち居振る舞いは風格に溢れていました。

出遭った当時の先生は、私が住んでいた某マンションの管理人さんでした。
「おはようございます」、「こんにちは」…朝夕、挨拶を交わす程度の関係でしたが、或る日のこと、どこかで見たことのある方(後になって思い出したのですが、閣僚経験のある国会議員でした)が管理人室を訪問、まるで“弟子”のように教えを乞うているのを偶然に目撃。気になって仕方がありませんでした。

きらら「おじさん(当時はこう呼んでいました)、この前、外車で来てた人、テレビで見たことあるんだけど、M代議士じゃない?」

一六先生「そうだよ」

きらら「どうして国会議員がおじさんのところへ?」

一六先生「恰好よく言えば、私の占いの“弟子”みたいなものだからね(笑)」

きらら「エッ、おじさんは占いの先生なの?」

一六先生「先生と言うほどでもないけど、四柱推命の他、人相、手相などをちょっと…ね」

(実は、一六先生は「大竹易占塾」という知る人ぞ知る占い塾を主宰していたのですが、そんなことはおくびにも出しません)

きらら「ヘーッ!凄いなあ。――子どもの頃には“伊那の占い少女”って呼ばれていたんですよ。本格的に勉強したいけど、私にもマスターできるかな?」

一六先生「難しいけど、努力すれば出来るよ」

きらら「じゃあ。今日から私も“弟子入り”させてください」

(思い出しても汗顔の至り。実に無邪気な動機による入門です)

翌日から、一六先生に戴いた「四柱推命」の教科書で猛勉強。やればやるほど興味が沸いて来て、分からないことがあると、1日に何度も管理人室に押しかけて質問攻め。――まさしくマンツーマン指導。先生にすれば、さぞかしご迷惑だったことでしょうが、管理人室に通うこと約1年半の間、嫌な顔ひとつせず、わがままな“押しかけ弟子”に諄々と教えて下さいました。

一六先生「よく頑張ったね。今まで、私が主宰する易占塾に何人もの弟子が志願してきたけど、大半が『難しすぎる』と音をあげて途中で辞めて行ったのに、異例の恰好で入門。それも驚異的なスピードで上達したのは、あなたが初めてです。もう大丈夫。今日を以って大竹一門4人目の“免許皆伝”を授与します。――最後に、占いは当てることは勿論、大事なことだけど、それ以上に大切なのは『心』です。つまり、相手の悩みを真剣に聞いてあげることで、心に安らぎを与えてあげることだということを忘れてはいけません。以上です」

その一六先生に「免許皆伝」を戴いたのは、丁度「お盆」の暑い日でした。

きらら(8/12)