「元祖イクメンはオオカミ」

wolf先週、20年来の友人であるA先生と何年振りかにお会いしました。一昨年、元某大学を定年で退官。現在は北海道に在住の動物学者です。

立場上、当然のこととはいえ、動物を愛するA先生の“講義”は、いつも新鮮且つ驚きの連続で箸を持つ手もついつい休みがちになります。

その日は時折、社会面を賑わせる「子どもに対する虐待」や「育児放棄」についてあれこれ話している時です。突然、先生からこんな問いかけがありました。

A先生「ところで、一番『育児上手の動物』は何だと思いますか?」

きらら「動物が子どもに注ぐ愛情は、人間に勝るとも劣らないと思いますが、う~ん、一番となると…?」

A先生「僕は断然、オオカミが一番だと思っている」

きらら「エッ、オオカミですか?『赤ずきんちゃん』など童話に出て来るオオカミは悪役ですが…」

A先生「確かに怖い顔つきだし、日本では乱獲で絶滅種になってしまったから、動物園にもいない。見たこともないうえ、物語では悪役にされるから、単純な想像、妄想だけで“悪の烙印”を押されるんだから、オオカミも気の毒だよ。彼らが口がきけたら名誉毀損の裁判を起こすに違いない(笑)」

きらら「そうですよね。全然、身近じゃないから仕方ないけど、よくよく考えたら、すべては観念上の悪役ですよね」

A先生「オオカミは群れを作って集団生活をしているが、一夫一婦制で家庭を形成している。浮気はしないし、不倫もしない。人間は見習わなくてはいけない(笑)」

きらら「ヘ~ッ。凄いなあ」

A先生「しかも、産後の雌オオカミは授乳以外、ほとんどを牡オオカミ、つまりお父さんオオカミが担当する。狩りはもちろん、外敵に対する“警備”まで、昼夜を分かたず不眠不休で家族を守る。獲物だって、自分の口の中で細かく噛み砕いて、口移しで母子に食べさせる。だから子どもが生まれたら、牡オオカミはげっそりと痩せるんだ」

きらら「うわ~っ、元祖イクメンですね!!」

A先生「オオカミは狩りの形態から集団でしか生き残れないから、それだけ家族、仲間を大事にするのだろうが、もうひとつ、オオカミを“弁護”すれば、彼らは絶対と言っていいほど、人間を襲うことはない」

きらら「てっきり人間まで襲うと思い込んでいましたが、そうなんですか? でも、“送りオオカミ”っていう言葉があるじゃないですか?」

A先生「それも間違っている……」

話しだしたら止まらない。A先生の話はまだまだ続きます。続きは来週に…。

きらら(7/1)