「Aさんからの懐かしい電話」

Sunset Flight 先日、数年前まで南米・某国の駐日特命全権大使だったAさんから国際電話がありました。
Aさんは生粋の日本人なのですが、10代半ばで両親に連れられて彼の地に移住。数々の苦労を克服、今や成功者のひとりとして地元で農協の役員や市長など要職を歴任後、晴れて駐日大使として“故国に錦”を飾った立志伝中の人物です。

「久し振りです。Aです。きららさん、頑張ってますか?」

「あっ、大使。ご無沙汰しています」

「駐日大使時代はお世話になりましたね」

「いやいや、私の方こそ…。大使もお変わりありませんか。でも突然、どうしたのですか?日本に来てるんですか?」

Aさんは、書くのは十分ではないのですが、会話は日本語でOK。スペイン語なんてチンプンカンプンの私でも、意志の疎通は完璧です(笑)。

「いや、いや。…実は数日前に名刺の整理をしている時に、きららさんに貰った名刺が出て来てね。懐かしくなって電話したのよ」

「まあ、光栄なことです。日本に来る機会があったら是非、お顔を見せてくださいね」

Aさんとの出会いは、紹介もアポもない、まったく突然のお客様としての出会いでした。

「国に残してきた家族のことで占って欲しいんだけど、お願いできますか?」

随分と風格のある方だなとは思いましたが、顔貌も言葉遣いもすっかり日本人でしたから、てっきり単身赴任で東京にお勤めしているのかな?と早とちり。――失礼にも、一国を代表する「特命全権大使」に対して、ご家族の仕事運、健康運、果てはAさんの将来までバッチリと鑑定。――「なるほど、なるほど。よく当たっています。日本を離れるまでは、きらら先生のアドバイスを大切に大任を果たしたいと思います。ありがとうね」

「ン?…日本を離れる?…大任を果たす?」

場違いの“単語”に首を傾げる私に、Aさんはようやく身分を明かしてくれましたが、いくら知らなかったこととはいえ、まさに汗顔の至り。――その後は日本を離れるまでの2年間、2ヶ月に1度のペースで私の許に通ってくれましたが、占いというより、苦労話や彼の国の実情、故国に対する思いなど、あれこれ話をしてくれました。――懐かしい思い出です。

きらら(6/3)